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ミステリの祭典

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特製チリコンカルネの殺人
ミセス・ポッターシリーズ

作家 ナンシー・ピカード
出版日1995年12月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 nukkam
(2017/04/02 23:13登録)
(ネタバレなしです) 本書のハヤカワ文庫版はナンシー・ピカード(1945年生まれ)の単独執筆作品であるかのような表装ですが、ヴァージニア・リッチ(1914-1985)によるミセス・ポッターシリーズ第4作の未完の遺稿をピカードが完成させて1993年に出版した1種の合作というのが正しいです(詳細は作者による「結びの言葉」で説明されてます)。舞台はアリゾナにあるミセス・ポッターが経営者である1万5千エーカーの牧場で、(メキシコとの国境近くの)南部アメリカの雰囲気が濃厚なのが本書の個性でもあります。タイトルにも使われている27種類の材料のチリコンカルネを筆頭にメキシコ料理描写の数々が作品世界を彩ります。もっともスペイン語と(和訳された)英語がごちゃ混ぜになる会話は凝り過ぎで、物語の流れを妨げ気味ですけど。牧場管理人親子の失踪事件、彼が掴んでいた(らしい)秘密とは何かの謎、そして物語後半にエスカレートする悲劇とサスペンスには優れていますがその一方でコージー派ならではの明るいユーモアは犠牲になっています。リッチの「料理上手は殺しの名人」(1982年)と比べて本格派推理小説の謎解き要素が弱いのも個人的には残念。巻末解説では「アガサ・クリスティーの作品にどこか似ている」と持ち上げていますが、個人的にはいくらなんでも過大評価ではと思います。

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