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ミステリの祭典

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病みたる秘剣
風車の浜吉捕物綴

作家 伊藤桂一
出版日1978年09月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 tider-tiger
(2017/09/16 13:07登録)
かつて根津の親分として名を馳せた岡っ引きの浜吉であったが、ふとしたことから法に触れ江戸から五年の所払いとなってしまう。刑期を終えて江戸に戻っては来たものの、今さらどの面下げて十手を持てるものかと、習い覚えた風車作りを生業にして江戸の片隅でひっそりと暮らしている。そんな浜吉もガキ仲間の喜助や下っ引き留造らの引き立ててでかつての姿を取り戻していく。

以前に書評した捕物小説のアンソロジー『捕物小説名作選一』に本シリーズの第一話が収録されており、興味が湧いたので購入。登録だけして書評を書くのが延び延びになっておりました。そういう作品が多いんですよね。すみません。
作者は昨年秋に九十九歳でお亡くなりになっているようです。
第一話を読んだ印象は劇画調のかっこいい話。子連れ狼みたいな世界観なのかと期待しておりましたが、どうもそういうシリーズではなく、だんだん人情味が強い普通の捕物小説のようになっていきました。下っ引きである留さんの相談役から始まり、浜吉は話が進むにつれてかつてのように親分へと復帰していきます。まあガチガチ鉄板な展開ですな。第一話のナイフみたいに尖っては触るものみな傷つけるような感覚が希薄になってしまったのは残念でした。とはいうものの、かっこいいアクションシーンは多く、読点を多用した噛んで含ませるような文章もなかなか味わいがあるし、話作りも安定した面白さがあります。
特に表題作がかっこいい。
浜吉の私生活は期待に反してほのぼのとしてしまいましたが、それはそれで良かったのかも。
二作目である『金隠しの絵図』もとい『隠し金の絵図』もなかなか良かった。以降の作は未読だが、やはり良質の捕物小説シリーズではないかと予想される。
これからも捕物小説を少しずつ読んで読書の幅を広げていきたいと思う今日この頃。

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