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ミステリの祭典

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誰にも探せない
改題『宝の地図をみつけたら』

作家 大崎梢
出版日2016年02月
平均点4.00点
書評数1人

No.1 4点 人並由真
(2017/03/01 10:02登録)
(ネタバレなし)
 山梨県の大学に在籍し、校内の郷土史研究会に参加する坂上晶良は、小学生の時から20歳の現在まで埋蔵金捜しのロマンにとりつかれていた。そんなある日、東京で働く同年の幼馴染み・桂木伯斗が現れた。小学生時代に同じ埋蔵金捜しの夢に憑かれていた伯斗は、東京で得た新たな情報をもとに晶良の協力を求めるが、やがて彼らの再会は思わぬ犯罪事件にと関連していく。

 大崎作品は初読だが、少なくともこれに関してはちょっと…という印象。中盤のあるサプライズを契機に物語の方向が大きく切り替わるが、それ自体が予想のつくものであり、さらにその大ネタと同じ設定から始めて、そちらは頭が沸騰するほど面白かった活劇小説の傑作が数年前にあった。後者に関しては作者の罪じゃないし、ほかにも類例があるかもしれないけど、とにかくインパクトを弱める一因になっている。
 それと中盤以降、日常を冒す身近の暴力人間の恐怖がもっと無ければまずい内容だが、その辺の緊張感がほとんど感じられない。webの書評を読むと作者としては珍しい方向のスリラーらしいので、もしかしたらそういう種類の悪人を描くのが苦手なのだろうか。仁木悦子が昔言った<ゾクゾクしない推理小説(本書の場合はもうちょっと広い意味でのミステリだが)は困ったもの>というのを思い出した。
 ちょっとひねったキャラクターシフトとか、面白くなりそうなところもあるんだけれどねえ。最後はなんとなく潮が引いていくような感じの終焉で、そこは味があるといえばある。人によっては、なんだこれ、かもしれんが。

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