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ミステリの祭典

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ハナシマさん
ハナシマさん(華志摩玲子)

作家 天宮伊佐
出版日2016年07月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 人並由真
(2017/02/24 20:02登録)
(ネタバレなし)
 北関東のある県の一角・韻雅町。地元の韻雅高校の二年A組はその日、一人の転校生の少女を迎える。彼女・華志摩玲子はあまりに際立った造形的な美貌と、他者を拒む態度から初日から孤立してしまうが、面倒見の良い級友・寺沢亜季は、何とか彼女「ハナシマさん」の胸襟を開こうとする。一方、亜季の父で県警の刑事である寺沢泰典は、韻雅町周辺で続発する怪異で猟奇的なバラバラ殺人事件を追うが…。

「新感覚のフォークロアミステリ」を謳うラノベホラー。世界像は非日常の異界に及び同時にかなり凄惨な描写もあるが、一方で一応はフーダニットの結構も具えた内容で、これはたしかに犯人捜しのミステリにもなっている。
 まあ登場人物が多くないため、本サイトの参加者なら真犯人の見当はたぶんつくと思うが、複数の劇中人物の視点を次々と切り替える手法のなかにさりげなくミスディレクションを張ろうとしているあたりは好感が持てる。

 タイトルロールの少女「ハナシマさん」がなんらかの形で殺人事件に決着をつけることは当初から予想がつくので、出口が見えないで終わるジャパネスクホラーのじめじめ感はあまりない。
 どちらかというと超自然的な存在が人間の闇の心に裁きを下す『地獄少女』みたいな方向の作品だが、さらに事態を陰から演出する脇役として、ライヘンバッハの滝から転生してきたみたいなサブキャラ「杜秋慈瑛(もりあきじえい)教授」とその美人助手「仙波蘭」(こっちは一瞬「?」となるが、すぐに「セバスチャン・モラン大佐」が元ネタとわかる)などのクセのある連中も暗躍。
 あれも盛り込みたい、これも……という作者の気分まで窺えて、その結果、菊地秀行の趣味的アクションホラーを水で薄めたようなものが出来たが、まあこれもアリだとは思う。
 一方でその分、結果的に物語内の要素がとっちらかってしまった感触も少なくないが、ラノベの文体としては先に書いた多人数視点の整理も潤滑で、一冊のホラーミステリとしてそれなり以上に楽しく読めた。

 年が明けてすでに続刊も出てるようだが、webの噂ではこれもまたなかなか変てこな内容みたいで、そのうち手にとってみようと思う。

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