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ミステリの祭典

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白バイガール
白バイ隊員・本田木乃美

作家 佐藤青南
出版日2016年01月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 人並由真
(2017/02/21 10:54登録)
(ネタバレなし)
 島根県出身の本田木乃美は、少女時代に見た箱根駅伝を先導する白バイの凛々しさに魅せられて白バイ警官になった、23歳の娘。神奈川県警に入庁した彼女は交番勤務を経て、ようやく待望の第一交通機動隊のA分隊に配属された。だが白バイに本気で憧れるものの運転技術は今ひとつで、ノルマとして違反者のキップを切り、ドライバーたちに憎まれる日々の仕事も辛かった。そんな木乃美を、入庁では後輩だが同性の白バイ警官としては先輩の同僚・川崎潤が冷ややかに見つめる。一方、県内では、不審な強盗事件が続発していた。

 文庫書下ろしの2016年の新作長篇。amazonのレビューで書評数を集めながら総じてなかなか評価がよく、さらに内容紹介の惹句にも「隊員同志の友情、迫力満点の追走劇、加速度的に深まる謎、三拍子揃った青春お仕事小説の誕生!」とあるので読んでみた。
 感想は、良い意味でフツーのキャラクターものの警察小説。ストーリーの展開はなめらかで、木乃美と潤の関係の変遷もお約束の感じながら、それを踏まえた上で登場人物たちはおおむねくっきり描けている(木乃美の仲間のA分隊の面々もさながら、木乃美と警察学校の同期の巨漢刑事で、あくまで彼女には異性の友人として接する坂巻透のキャラが結構いい)。
 まったく読んだことはないからあまり無責任なことを言っちゃいけないんだけど、昭和の春陽堂文庫の非ミステリの大衆小説路線のよくできたものって、こんな感じかな、というイメージである。 クライマックスの疾走感もなかなか、最後のクロージングも温かい王道で、数時間楽しめるエンターテインメントにはなってるんじゃないかと。
(とはいえ売りの三つのポイントのうち「加速度的に深まる謎」というのはそんなに大したものでなく、純粋にミステリとして読むとアレではあろう。悪役キャラの意外性も予想の範疇だし。まあ、そのいやらしい憎たらしい書き方は良かったが)。
 
 なお中盤でいかにもそれっぽく出てくるキャラは、作者の別シリーズ「女性消防士・高柳蘭」の主人公とその相棒なんだな。なんか春日光弘の初期作『I LOVE あやめ』に顔を出すダーティ・リョーコみたいだった(と言っても何人わかるか知らんが~笑~)。

 最後に。319ページ、潤の運転するバイクにタンデムで木乃美が搭乗する場面があり、そこで「(潤が)木乃美の腰をしっかりと抱き締める」とあるが、これじゃバイクがこけちゃうよね。再版の際には「木乃美が(潤の)腰をしっかりと抱き締める」か、あるいは「(木乃美が)潤の腰をしっかりと抱き締める」に、しっかりと直しておいてください。 

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