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ミステリの祭典

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暗闇の道

作家 ジョゼフ・ヘイズ
出版日1987年06月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 tider-tiger
(2019/05/14 23:06登録)
~カメラマンのアンドルゥ・ホーガンの元に息子のトッドが事件に巻き込まれたとの奇妙な知らせが飛びこむ。なにが奇妙なのかというと、アンドルゥに息子などいやしないのだ。ただ、離婚した妻がもしかすると……。息子(かもしれない)トッドとその恋人は森でキャンプをしていたところ事件が起こり、恋人は行方不明なのだという。事件を警察に知らせたアンドルゥは警察に疑われてそのまま留置場に入れられていた。とりあえずアンドルゥはトッドの元に向かうのだった。~

1985年アメリカ作品。ずいぶん前に登録したのに書評するのをすっかり忘れておりました。作者の本業は劇作家、脚本家のようで他にも小説はあるようですが、邦訳されているのは本作だけのようです。
導入から息子の正体が話の肝となりそうな気配ありますが、そういう話ではありません。プロットの骨格は知り合ったばかりの息子の冤罪を晴らしつつ、その息子との絆を紡ぐというものです。
視点人物が非常に多く、ある種の群像劇ともいえそうな内容です。そこまで視点人物を増やす必要があったのかと疑問に思いましたし、敵の視点がふんだんに盛り込まれているのでかなり早い段階で犯罪の全容が読者の目に明らかになってしまいます。その点を物足りなく思う方もいるかもしれません。隠された動機のようなものはありますが、当時としてはタイムリーだったとしても現在ではいささか古めかしく陳腐です。
本筋の事件は極めてシンプルなうえにたった二日間で事件は終了。なのに、さまざまな要素が絡みあい本もけっこう厚みあります(本編553頁)。退屈ではありません。読み応えあります。
構成や人物造型、描写などに映画畑の人だと強く感じさせる部分がけっこうありました。違和感というか、少し不思議な感じがしました。
目を見張る謎はありませんが、筆力あり、なかなかのスリルがあり、人間がいて、アメリカの闇があります。あとがきにもありますが、本作のテーマの一つは家族です。
個人的なツボは終盤に出てくるとある哀しい夫婦でした。

タイトルが内容と合っているようで合っていない気がしましたが、最後まで読んで、少し考えてみるとなんだか納得がいきました。非常に多くの視点から『暗闇の道(原題The Way of Darkness)』が紡ぎだされていたのだなと。

※サンケイ文庫版では作者名が『ジョゼフ・ヘイズ』となっていますが、扶桑社版では『ジョセフ・ヘイズ』となっています。所有するサンケイ版に準じて『ジョゼフ』で登録しました。

以下 2021年5月9日追記
本書評にて作者の邦訳作品はこれ(暗闇の道)しかないと書きましたが、人並さんよりヤボなツッコミ(笑)賜りました。他にも邦訳作品はあるようです。
御指摘感謝いたします。
以下は人並さんの同じ作者の作品『第3の日』御書評より抜粋
~本サイトでのtider-tigerさんによる『暗闇の道』のレビューでは同作しか邦訳がないようだとあるが、実際は同作と本作、さらに早川ポケットブックに収録の『必死の逃亡者』とのべ3作品が紹介されている(tider-tigerさん、ヤボな指摘(ツッコミ)、誠にすみません~汗~)。~

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