home

ミステリの祭典

login
ロシアン・ルーレット

作家 山田正紀
出版日2005年03月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 6点 麝香福郎
(2023/04/28 23:26登録)
崖から転落したバスが、横倒しになった送電塔の突端に車体の中央が串刺しにされ、崖から宙づりになり、きしみながら左右に揺れている。
物語は基本的に、事故直前、そのバスに乗り合わせたK県は人口十五万人の栖壁市の刑事・群生の意識を中心に繰り広げられていく。各章の主人公が変わっても、すべて群生の視点のみから語られる。あらかじめ乗客全員と面識があるわけではない。ただ一人の例外は、かつて彼と何らかのつながりがあったらしいコンビニのアルバイト娘、相楽霧子だが、しかし彼女にしても同市の場末のカラオケボックスで殺害されたばかり。にもかかわらず、額の銃痕もあらわな彼女が堂々と同じバスに乗り、群生に話しかけてくるのだから、果たしてこれは幻影か幽霊か。
バスの運転手から果樹園経営者の妻、七歳の少年、拒食症の女、営業部長、菌マウスの研究者まで、各人の人生が怒涛のように群生の意識へ流れ込む。やがて連作は語り手である群生本人が秘めるとてつもない闇に向かって突進する。従来の物語そのものの約束事をまんまと突き崩す仕掛けが随所に詰め込まれている。語り手という存在そのものが秘める恐怖を露呈させた、高度に実験的にして極度に娯楽的ホラー・サスペンスといってよい。

No.1 6点 虫暮部
(2016/11/08 09:58登録)
 作者御得意の虚構性を生かしたミステリアスなストーリー集(短編集のような長編)。どのエピソードもやりきれなくて面白い。しかしこれの何処がロシアン・ルーレット?

2レコード表示中です 書評