(2016/10/27 13:40登録)
(ネタバレなしです) 米国のマーガレット・トルーマン(1924-2008)は第33代米国大統領ハリー・S・トルーマン(1884-1972)の娘で、1980年に本書を出版した時は大統領ファミリーがホワイトハウスで起こった殺人事件をテーマにした本格派推理小説を書いたと結構話題を集めたようです(日本でもすぐ翻訳出版されました)。しかし現在はこれについては疑問符がついてます。というのはトルーマンは本書の成功に自信を得て全部で25作(1作は死後出版)のミステリー(「Capital Crime」シリーズと呼ばれてます)を発表したのですが実は第2作以降は全てドナルド・ベイン(1935年生まれ)による代作であり、本書についても(証明はされていないものの)ウィリアム・ハリントン(1931-2000)による代作の可能性があるという何とも灰色な状況になってしまったのです(余談ですがベインはトルーマンの死後も遺族と契約して「トルーマン」の作品を書き続けています)。さて作品内容についてですが、殺人舞台はまさしくホワイトハウスでしかも被害者は国務長官という超大物ですが派手な描写は全くありません。特殊な場所ゆえに容疑者もすぐ絞り込まれそうですが、機会よりも動機に捜査の重点を置いたかのように被害者の人間関係をひたすら地味に調べていく展開が続きます。ドライな文体で淡々と(やや一本調子気味に)進行しますが最後は人間ドラマとして感情の高まりが描写されます。推理は物足りなく、謎解きの大半は自白頼りです。
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