(2016/10/23 04:21登録)
(ネタバレなしです) 1962年発表のパーブライト警部シリーズ第3作の本格派推理小説です。何と情報部員が登場して捜査に参加しているのが本書の特徴です。アガサ・クリスティーもエルキュール・ポアロシリーズの「複数の時計」(1963年)で同様の試みをしており、本書と読み比べるものも一興かもしれません。創元推理文庫版の巻末解説で説明されていますが、イアン・フレミングのジェイムズ・ボンドシリーズの世界的ヒットでスパイ小説が大人気だった時代だからこそ本書のような作品が生まれたのでしょうね。「笑える作品」、「コメディの花火」、「ファルス・ミステリ」と表現は違えどアントニイ・バークリー、ジュリアン・シモンズ、H・R・F・キーティングがユーモアミステリーとして高く評価していますが、クレイグ・ライスやジョン・ディクスン・カーのように派手で勢いのあるどたばたで笑わせるのとは違い、見解の相違やちょっとした皮肉からじわじわと醸成されるユーモアです。私のように理解力が弱い読者だと二度読み三度読みしないと作品のよさがぴんと来にくいかもしれません。謎解き説明ももう少し丁寧さが望まれます。
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