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ミステリの祭典

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800年後に会いにいく

作家 河合莞爾
出版日2016年08月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 人並由真
(2017/01/29 07:41登録)
(ネタバレなし)
 2027年のクリスマスシーズン。三流大学の四年生で就職の当てもない貧乏学生・飛田旅人(とびたたびと)は、一枚のチラシを手に奇妙な会社「エターナル・ライフ」を訪ねた。同社は企業用のITセキュリティを行うベンチャー会社で、旅人は奇矯な社長・エンゼル空野と、旅人と同年代の美人天才プログラマー・菜野マリアのもとでアルバイトとして働くことになる。新作ソフト開発を補助する雑用を指示された旅人は、同じ職場で顔を合わせるマリアに次第に惹かれていくが、ある日彼は、そのマリアに恋人がいるのを知る。そんな中、クリスマスイヴに会社でデータ視認のため留守番をしていた旅人は、800年後の世界の少女メイからの、救済を求める動画データを受け取った…。

 21世紀の近未来SF枠内で書かれたジャック・フィニィ調の<時を超える恋愛譚>の中に、作中の現実を脅かす反原発派の過激テロリズムの緊張劇がからみ、それで旅人のメイとマリアへの想いも含めて物語はどこへ行くのか…で、これは……などなどと思いながら読んでいると、後半~終盤はうーむ、あらら……と唸らされた。

 原稿用紙で700枚弱(そう奥付に記載)とやや長めの作品だが、名前の設定された主要登場人物はわずかひとけた。平明でリズミカルな文体も心地よく、ほとんど一気に読み終えられた。21世紀の側のキャラクターシフトがちょっとだけ図式的な印象はあったが、そんな不満を補ってとても気持ち良い後味で本を閉じられる。広義のSFミステリの、そしてユールタイド・ラブストーリーの秀作。 

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