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ミステリの祭典

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沈める濤

作家 天城一
出版日2009年04月
平均点3.00点
書評数1人

No.1 3点 nukkam
(2016/08/16 13:56登録)
(ネタバレなしです) 天城一(1919-2007)の長編作品は全部で3作ですがその最後の作品が本書です。なかなか出版の機会に恵まれなかった作者ですが本書も完成から出版までの経緯が複雑です。1976年には完成していたそうですが私家版で出版されたのが1999年、商業出版されたのは2009年です(「天城一傑作集4」に第1長編の「風の時/狼の時」と一緒に収められました)。プロットは前半(第四章まで)を五百島(いおしま)部長刑事、後半(第五章以降)を淡路刑事を語り手として進行し、さらにはあの島崎警部も登場します。しかしながら物語の合間合間で語られる下士官出身者の戦時中や戦後の生き様や考え方のエピソードが謎解きの興味を寸断してしまいます。天城らしいといえばらしいのですがやたらと脇道にそれているように感じられます。また終盤に五百島が「死体を一つも見ない」「肝心の証人を1人も尋問できなかった」などと述懐しているように捜査描写もどこか焦点が定まっておらず、読み手を選ぶ本格派推理小説です。

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