(2016/08/20 23:57登録)
(ネタバレなしです) 米国生まれのフランス人作家アントワーヌ・ベロ(1970年生まれ)によって1998年に発表された長編ミステリー第1作は実に変わった本格派推理小説です。全体にまたがるテーマはジグソーパズルで、想像の産物とは思えぬほどパズル競技やパズル団体が詳細に描かれています。作品世界だけでなく作品形態にまでパズル要素を織り込んでおり、「謎」というタイトルのプロローグの後に続く48章(ピース)は、パズルの断片をランダムに積み上げたかのように時系列がバラバラです。実は作者はこの48のピースを1冊の形に製本せずにバラバラな状態で箱に入れて販売したかったらしく、小説としての伝統だけでなく本としての伝統までもぶち壊そうとしたのですから恐れ入ります(製作費が高くなり過ぎるので本になりましたが)。48のピースは記事や議事録や手紙などそれぞれが完結した形になっているものが多いので意外と読みやすいですが、頭の整理のために登場人物リストぐらいは作りながら読んだ方がいいと思います。解決編ではちゃんと推理による謎解きがありますがここでも最後の一行に至るまでパズルへのこだわりが見られます。また島田荘司の「占星術殺人事件」(1981年)と読み比べるのも面白いかもしれません。
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