(2016/08/05 05:32登録)
(ネタバレなしです) 米国のレイア・ルース・ロビンソン(1951年生まれ)は病院の検査技師や用務員としてのキャリアを持つ女性作家ですが本人のコメントにれば「作家になることを目指したので医療に携わる仕事に就いた」だそうな。まじめに医者を目指している人の反感を買いかねない発言のような気もしますが(笑)。とはいえ1988年発表のデビュー作である本書(新潮文庫版でメディカル・スリラーと紹介されています)で描かれている病院の雰囲気は医学に疎い私には十分にリアリティーを感じさせました。主人公の研修医エヴリン・サトクリフ(新潮文庫版ではイブリン)を中心に複雑な人間関係や内面心理を丁寧に描いており、キャラクター小説と言ってもおかしくありません。もっとも時に相手を追い詰めるような口調で質問するエヴリンのキャラクターは好き嫌いが分かれそうです。退屈な作品ではありませんが殺伐とした緊張感のようなものがずっと続くのでこれはこれで読んでて疲れます。さりげなく提示される動機の伏線などミステリーとして巧妙な部分もあるけれど「病院物語」要素の方が強いように思います。このシリ-ズ、後年作になるほど本格派推理小説の謎解きが充実していきます。
|