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ミステリの祭典

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タイタス・クロウの事件簿
タイタス・クロウ

作家 ブライアン・ラムレイ
出版日2001年03月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 クリスティ再読
(2016/07/19 22:29登録)
評者一時クトゥルフ神話にはハマって、青心社あたりまで手をだしていろいろ読んだんだが、結局ラヴクラフト周辺くらいまでしか嗜好が合わなかったな。評者はどうもファンアートっぽい甘えが体質的に嫌いなんだよね。本サイトだと一応ラヴクラフトの創元の全集の評はあるんだけど、それに書く...のはちょっと本旨が違う気もする。なので、クトゥルフでミステリな作品があれば?と見渡すんだがあるんだよね。これがまあそう。
ラヴクラフトだと「恐怖」がメインなので、最終的に真相を知った主人公は惨殺体で発見されました...というオチ以外では終わらせれないわけだ。だから真相を解明して名声をあげる名探偵なんてものはそもそも不可能だけど、ホームズファンのダーレスを経てオカルト・アクション物の設定みたいなものになっちゃうと、オカルト探偵のバリエーションでクトゥルフ名探偵が成立する。ここで上手くやったのが本作のタイタス・クロウで、ホームズ風のキャラ小説としてうまく成立している。
とはいえ、オカルト探偵として成立しているのは本短編集と最初の長編「地を穿つ魔」くらいのもので、「タイタス・クロウの帰還」ともなるとSFスーパーヒーロー化しちゃって本サイトの守備範囲からは大幅にズレることになる。まあなので期間限定名探偵なんだけども、ラヴクラフトより後のクトゥルフが本質的にガジェット小説になってることと、ホームズに範を取った名探偵小説とは、意外なほどに相性がいい。まあホームズってガジェット小説の元祖でもあるわけなんだよね...というわけで、クトゥルフ+ホームズなタイタス・クロウの、犯罪者もとい魔道師相手の知的闘争という格好の本短編集、出来不出来はあってもそれなりにそれぞれ面白い。というのも、小説としての出来が今一つな短いものほど、ガジェット性が強く出ていて「そういう発想なんだよね」というのが納得できる利点もある。で、作家としてうまくなったあとの長めの作品、「妖蛆の王」とか「名数秘法」とか充分楽しめる作品である。とくに「名数秘法」とかホィートリー風の国際スパイ色までついているわけで、ある意味ホィートリーとかブラックバーン(そういやウルトラQぽさも共通する...)の後継者みたいなものかもしれないね。

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