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ミステリの祭典

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杉下右京の冒険
テレ朝「相棒」オリジナル小説

作家 碇卯人
出版日2012年03月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 5点 E-BANKER
(2021/12/20 20:29登録)
今度は「杉下右京」即ち、日本の刑事ドラマ史上、最も活躍しているキャラクターである(そして未だに現役!)
本作は地上波でも放送されたもののノベライズという位置付け(でよいのだろうか?)。ただし、「相棒」(この頃は神戸刑事)は登場せず、杉下右京が出張先で事件に遭遇するという「冒険」譚となっている。
2012年の発表。

①「紺碧の墓標」=舞台は東京の遥か南。伊豆諸島の一つである「三宅島」なのだが、更に三宅島の沖合に浮かぶ小島「御蔵島」が途中から舞台として浮上する。当初は本土からの釣り人が事故死したと考えられていた事件が、右京の鋭すぎる洞察力で殺人事件へと変貌していく。島で出会った善良な人々ー三宅島署の刑事や民宿の主人、御蔵島の駐在や自然を守るために移住してきた人々etc おおらかで誰もが癒されるはずの島の環境が、逆に人間の欲やエゴの犠牲になってしまう。そしてついに殺人事件まで・・・。これはもしかしたら、杉下右京の勘が鋭すぎるために引っ張り出してしまった事件なのかもしれない。そういう悲しい現実がラストには待ち受けている。
②「野鳥とUFO」=舞台は韓国・ソウル。本来の任務を終えたはずの杉下右京は野鳥の大量死と謎のUFO出現という奇妙な謎に惹かれ、現地の刑事とともに真相の解明に奔走することとなる。途中、事件の鍵を握ると思われる「奇妙な建物」に遭遇。敵に捕らわれるという一大事になりながらも、最後には無事解決に導く。ただ、「謎」そのものは小粒で、「動機」につながる日・米・韓の関係についてもちょっと安易だなぁーという感想は持った。申し訳ないが、この程度の事件・謎ならば現地の警察に任せておけばよかったのではないか?というのが率直な感想。

以上、今回は中編2編という構成。
①②の比較では断然①の方が面白かった。
①は国内だが離れ小島、②は外国、ということでいつもは一応官憲としての権力をふるえる右京にとって、捜査がままならないという環境下に置かれることが逆に本作の「肝」となるのだろう。ただし、鋭い推理力はいつもどおりであり、結局瞬く間に事件の裏側そして真相を見抜いてしまう。
そういう意味では、もう少し歯ごたえのある謎・事件を用意しないと、彼にとっては不服なのかもしれない。ノベライズとしてはまずまずの出来といって差し支えないと思う。
(恥ずかしながら、碇卯人氏が鳥〇〇〇氏の別名義だということを初めて知った次第。なるほど、①も②も「鳥」が結構関わってるしね・・・。個人的に「相棒シリーズ」は殆ど見てないからなぁ・・・)

No.1 6点 初老人
(2016/06/12 21:04登録)
テレビドラマ「相棒」の主人公である杉下右京が相棒不在時に単独で活躍するシリーズ第二弾。
今回は、刑事部長より三宅島にて溺れ死んだ釣り人の検視の命を授かり三宅島空港に降り立った右京。事故か他殺か?判然としないまま、やがて事件を解くカギは18キロ離れた御蔵島にあることが見えてきてー『紺碧の墓標』
証拠品を返却するため、韓国ソウルへ飛んだ右京。そこで耳にしたUFO目撃事件と野鳥の大量死の間に意外なつながりがある事が分かりー『野鳥とUFO』
の中編二話を収録。
前回よりも本格度は落ちるが充実の内容で、特に第二話の真相には当然の事ながら思い至らなかった。声だけの登場ながらあのキャラクターが出てくるというのもファンにとっては嬉しいサービスだ。

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