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ミステリの祭典

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金田一耕助、パノラマ島へ行く

作家 芦辺拓
出版日2016年02月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 人並由真
(2016/06/01 15:19登録)
(ネタバレなし)
 今年2016年の新刊で、すでにおなじみ、この作者による金田一耕助&明智小五郎パスティーシュ路線の三冊目。
 本書には標題作「金田一耕助、パノラマ島へ行く」のほか、明智側の面々(文代さんや小林くん込み)を主人公にした「明智小五郎、獄門島へ行く」の二中編を収録。それぞれ独立した事件ながら、若干の関連性もある構成になっている。
 標題作は良くも悪くもワンアイデア(いやアイデア2つかな)を伏線や手掛かりの出し方で補強していった感じだが、後者は同じ構造ながらも仕掛けの手数はさらにぐんと増えていて面白い。こういう作品なら必須の、ミステリ史・昭和史における小ネタの数々もふんだんなく盛り込まれ、一種のパロデイミステリとしても十分に機能している。特に「獄門島へ行く」では、最後、あの名シーンの再現をそっと彼方から窺い、思いを寄せるある人物の優しい視線がとても良い。

 なおこの金田一&明智ものを含む、作者による歴代名探偵のパスティーシュ作品(中短編)はすでに17作品を数えるが、本書の巻末にはそれらの挿話を事件発生年順に並べた一覧リストが記載されており、これは有難い。
 そのうちこの路線の中で、折竹孫七VS人見十吉とかやらないかな。森江ものの『地底獣国の殺人』とかとも<何らかの形>でからませて(筆者が寡聞にして知らないだけで、どっかにそういうネタのパスティーシュがすでに存在してるかもしれんけど)。

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