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ミステリの祭典

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嵐の館

作家 ミニオン・G・エバハート
出版日2016年06月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 人並由真
(2016/07/09 05:14登録)
(ネタバレなし)
 資産家だった父を亡くした若い娘ノーニは、カリブ海の孤島ビードン島の農場主ロイヤルと数日後に結婚する予定だ。相手のロイヤルは、ノーニの父の友人で初老の男性。年の差はあるが、ノーニは子供時代からの長い付き合いで親しみを感じていた。だがノーニは式の直前に、島の青年ジムと本心での自分が相思相愛なのに気づいた。ロイヤルとの婚約解消を考えるノーニだが、そんな矢先、ジムの伯母でロイヤルと並ぶ島の農園主ハーマイニーが何者かに銃殺される事件が起きる! 島に嵐の気配が迫るなか、殺人事件はやがて次の事態へと…。

 1949年の長編。程よいエキゾチシズムの中にメロドラマはたっぷり、サスペンスもなかなか。疑わしい登場人物が入り乱れるフーダニットの興味もそれなりにあり、犯人捜しとしても普通に楽しめる。なお解説で書かれるように、伏線というか手掛かりがかなり大胆に張ってあり、その辺は国産ミステリでいえば仁木悦子あたりの手際に近い印象。
(とはいえ筆者はそっちの手掛かりとは別に、小説の流れの方で終盤の展開を予想。その場合、犯人は…だろうな、と推察したら、その通りだった。)

 手慣れた作家の安全株という感触でまとまり良く、リーダビリティも高い一冊だが、タイトルロールの「嵐」がもう一つ効果を上げてないのだけはナンだった。この辺は、我が国の『風花島殺人事件』のクライマックスの臨場感とかの方が、はるかに印象深かったりする。
 いずれにしろエバハートも、もっと紹介してもらってもイイね。

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