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ミステリの祭典

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ららら科學の子

作家 矢作俊彦
出版日2003年09月
平均点9.00点
書評数1人

No.1 9点 tider-tiger
(2016/05/24 07:14登録)
1960年代、「彼」は学生運動にのめりこみ、警察官に重傷を負わせ指名手配される。中国に逃げ出すも、文化大革命により片田舎へと追いやられ、そこで結婚するもなぜか三十年後に日本へ還ってくる。50歳の彼が日本で見たものは、彼は何を思い、何をするのか。

「彼」の彷徨と覚醒の物語。
文章はとてもいい。主人公はわけわからん。自分のやって来たことは無意味ではなかったのだと信じ込んでいる、あるいは信じたがっている男だろうか。ある種の一貫性はある。
小道具として「猫のゆりかご」が使われたり、サリンジャー(ライ麦畑でつかまえて)やグレアム・グリーン(ヒューマン・ファクター)を思い出させる場面が登場したりする。
若い人が読んでも反発を覚えるだけで面白くはない小説でしょう。私の年齢が下限ギリギリくらいか。
まあやたらと欠点の多い作品です。
今となっては主人公の思想に共鳴する人は多くないでしょうし(私もそう)、そもそもこの男は人間的に大いなる欠損がある。プロットは平坦、ご都合主義もひどい。主人公の内面(行動の動機)がよくわからない。登場する女性たちがなぜか主人公に懐くのだが、理由がさっぱりわからない。タックスマンにおけるポールのベースプレイについて言及があるけど、あの曲は(ポールの)ギタープレイについても言及されるべき。そのうえ、さあこれから勝負が始まるぞというところで小説は終わってしまう。
ハードボイルド小説の前日譚のような話。
この人は東野圭吾や宮部みゆきにヒット商品の作り方を教えて貰った方がいい。

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