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ミステリの祭典

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飛鳥高探偵小説選Ⅱ

作家 飛鳥高
出版日2016年03月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 kanamori
(2016/06/30 21:06登録)
主として昭和20年代から30年代に、雑誌「宝石」を中心に作品を発表した兼業作家・飛鳥高の作品集。2巻目の本書は、長編の「死を運ぶトラック」を目玉に、昭和30年代後半に発表された短編10編が収録されています。初期作の「犯罪の場」のようなトリッキィなものはなく、通俗的で社会性を持った作品が多い。

「死を運ぶトラック」は、昭和34年発表の長編第2作。「幻の女」タイプのアリバイ奪取の趣向が前作に続いて再び使われていたり、殺害トリックの解明が伏線なく唐突になされていて、謎解きミステリとしてはあまり高い評価はできませんが、松本清張ばりの社会派要素を背景にした一人の刑事による捜査小説として読めばそれなりに面白い。もう一人の主人公である元やくざのトラック運転手の存在が、最後に意外な形で効いてくるのも良。抒情性とアイロニーという作者の持ち味がよく出ている作品。
短編では、盗みに入ったアパートの部屋で死体を発見した泥棒が、現場の状況からロジカルに犯人像を推理する「鼠はにっこりこ」が良い。途中までの展開は、ローレンス・ブロックの泥棒バーニイ・シリーズを連想させる軽妙さがありますが、結末の後味の悪さは好みの分かれるところかも。
そのほかでは「大人の城」「猫とオートバイ」が印象に残った。ともに、ちょっとした不良少年を主人公にしたクライム・ストーリーで、この時期の作風を代表するような作品といえそうです。

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