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ミステリの祭典

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咸臨丸風雲録 福沢諭吉の推理

作家 海渡英祐
出版日1983年03月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 kanamori
(2016/06/10 18:42登録)
万延元年、遣米使節団の隋行艦・咸臨丸は、勝麟太郎を艦長格に据え、太平洋を横断・サンフランシスコを目指し品川港を出航した。軍艦奉行・木村摂津守の従者として乗船した諭吉だったが、荒天や濃霧による船内の混乱がつづくなか、出航前に殺された水夫の幽霊が出没する騒動まで起きて--------。

乱歩賞を受賞した「伯林 一八八八年」の森林太郎(鴎外)や清水次郎長など、歴史上の著名人を探偵役にした歴史ミステリを十八番とする作者ですが、本書も、若き日の福沢諭吉を探偵役に、勝海舟やジョン万次郎など多くの歴史上の人物が登場する幕末の船上ミステリになっています。
巻末の参考文献一覧を見ると、士官の航海日誌やアドバイザーとして乗船したアメリカ人ブルック大尉の日記、その他多くの研究書が参考文献としてあがっており、史実に基づく歴史小説としてはなかなかの労作だとは思います。
ただ、その史実の枠組みが足かせになって、謎解きミステリの要素が弱く、人間消失トリックを扱ったメインの謎も小粒と言わざるを得ません。船酔いのため勝海舟が終始艦長室にひきこもっていたという有名なエピソードが、意外なところで効いてくるのは上手いとは思いますが、主人公の諭吉をはじめ著名人のキャラクターが通り一遍であまり魅力を感じません。
ということで、歴史小説として6点、ミステリとしては4点、間をとってこの点数にしておきます。

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