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ミステリの祭典

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紅鱒館の惨劇
鮎川哲也編

作家 アンソロジー(国内編集者)
出版日1981年12月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 kanamori
(2016/04/15 21:20登録)
昭和20年~30年代に発表された”幻の本格派作家”のシリーズ探偵ものを収録した鮎川哲也編アンソロジー、『殺意のトリック』『殺人設計図』に続く第3巻です。大阪圭吉「寒の夜晴れ」や天城一「ポツダム犯罪」などの有名作もありますが、ここではマイナーな初読の作品について寸評します。

表題作の岡村雄輔「紅鱒館の惨劇」は、シリーズ探偵・秋水魚太郎が初登場するヴァン・ダイン風の館ミステリ中編で、犯人のユニークな偽装工作や6つの疑問点からの推理がそれなりに面白い。水上幻一郎「火山観測所殺人事件」も典型的なコード型本格ですが、舞台設定があまり活かされていない感じがする。
九鬼紫郎「豹郎都へ行く」は、とぼけた探偵の不可解な行為から隠れた構図が暴かれるというプロットは、泡坂妻夫の亜シリーズを思わせる。これは連作で読んでみたい気もする。
香住春吾「間貫子の死」は、ユーモラスな語り口と”村の慣習”に起因する派手な殺人方法との対比が印象的で、編中で最もインパクトがあった。本作が犯人当てゲームのテキストだったというのがなんともw
坪田宏の「歯」は、機械的トリックが複雑で分かりずらく、重要情報の後出しも減点要素ですが、しっかりした文章力と精緻な描写は好印象。最後の千代有三「エロスの悲歌」は、思い切り意外な犯人を設定しているものの、それまでの錯綜した愛憎関係の話が浮いてしまっているように思う。
なお、現在では岡村雄輔や水上幻一郎、千代有三、坪田宏ら、収録作家のほとんどが論創社の”探偵小説選”シリーズで個人作品集が出ています。その論創ミステリ叢書が100巻に達しようとする時代が来るとは、さすがに鮎川センセーも想像していなかったでしょうね。

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