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ミステリの祭典

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秘密捜査

作家 ジェイムズ・エルロイ
出版日1984年08月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 tider-tiger
(2016/04/13 03:20登録)
有能だが野心の強いフレディ巡査は捜査課の刑事を目指しており、先走った行動が目立つ。フレディは知り合いの女性が扼殺された事件で単独で捜査を行い、犯人と思しき男を突き止める。警部補ダドリー・スミス(後の作品にも登場する)の指示の元、その男に暴力的な尋問を行い自白を取ったのだが、それは取り返しのつかない過ちであった。

エルロイの二作目にして、エルロイらしさは随所に見られるも、まだエルロイじゃないといった印象の作品(故にこの点数)。その証拠に読み易い。LA四部作以降の作品よりも初期の作品の方が完成度が高いと考える人がいても不思議ではない。
特筆したいのはブラック・ダリアとの共通点。まず物語の構造が非常によく似ている。人物造型も殺されたシングルマザーの看護婦はアル中で男の出入りが激しく、エルロイの母親を思わせる。その息子の人物像にはエルロイと重なるところがあるように思える。ラストが甘いところまでそっくりだ。ブラックダリアに思い入れのある方には一読を薦めたい。
さらに、作中でブラック・ダリア事件(実在ではなくエルロイが後に創作した架空の事件のほう)について言及がある。本作執筆時点でブラック・ダリアの構想が作者の内にあったのかもしれない。
初期作品できちんと書く技術の修養をしたうえで、いかに自分らしく書くかを模索した結果があのLA四部作なのではないかと想像する。
「小説は技術で書くものではない」まったく同意できない意見だが、仮にエルロイがこれを言ったとしたらそうだよねと頷くしかない。

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