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ミステリの祭典

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危険な水系

作家 斎藤栄
出版日1979年08月
平均点3.00点
書評数1人

No.1 3点
(2020/09/14 00:24登録)
斎藤栄の中でもかなり初期の作品で、同じ1971年には代表作の一つと言っていい『香港殺人旅行』も書かれています。しかし本作は、そのような厳格な謎解きものではありませんでした。事件の骨格だけ取り出してみれば、公害をまき散らす企業とそれに対する反対運動を中心に据えて、最後に意外な犯人を明かしてみせる作品です。ということで一応社会派に分類はしたのですが。
普通なら社会派テーマをどこまで掘り下げ、また犯人の意外性をいかに効果的に演出するかに工夫をこらすところでしょうが、本作はそこに自衛隊と企業との癒着も取り込むことによって、妙にリアリティを欠いたものになっているのです。無理やりな偶然によって構成されてしまった密室は、原理的にはすぐ指摘されるダミー解決も粗雑ですし、実際の方法はもっとあほらしいというか、現実的な構造が全く理解できません。また最後の停電も全く意味不明です。

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