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ミステリの祭典

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飛鳥高探偵小説選Ⅰ

作家 飛鳥高
出版日2016年02月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 kanamori
(2016/04/02 09:06登録)
昭和22年の宝石誌デビューから30年代前半までに雑誌に発表された中短編8篇と、長編第1作の「疑惑の夜」、その他エッセイ等が収録されています。

短編に関しては、河出文庫の本格ミステリ・コレクション「飛鳥高名作選 犯罪の場」で、めぼしい作品は大方出尽くしていると思っていたのですが、6篇の単行本初収録作品が案外と楽しめました。
その短編のなかでは、ディクスン・カーばりの怪奇現象と不可能トリックものの「白馬の怪」をベストに推す。白い馬が徐々に消えてゆくトリックはバカミスぽいですが、物語の背景描写や雰囲気作りがいいです。
浅間山のふもとに暮らす一家の中で発生した惨劇を描いた「火の山」は、読みごたえのある力作の中編。ただ、終盤が駆け足ぎみなのが残念な点で、これは十分長編で書けるのではと思えた。他の短編も含めて、不可能トリックを扱ったトリッキィなものが多いのですが、文章だけでは現場状況が分かりずらいものが多く、見取り図があればよかったかなと思う。
長編の「疑惑の夜」は、江戸川乱歩賞を仁木悦子「猫は知っていた」や土屋隆夫「天狗の面」と争った作者の長編デビュー作。「細い赤い糸」が「喪服のランデヴー」ならば、本作は部分的なプロットが「幻の女」を思わせるところがあり、ウールリッチの影響大と感じさせるところがあるものの、密室、人間消失のトリックなど、作者の長編の中では比較的本格ミステリ志向の強い作品です。

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