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ミステリの祭典

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土蛍
猿若町捕物帳

作家 近藤史恵
出版日2013年06月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 kanamori
(2016/05/06 21:09登録)
南町奉行所の定町廻り同心・玉島千蔭は、人気女形役者・巴之丞が所属する中村座の奈落で、役者が首を吊ったと知らせを受ける。現場の状況に不審を抱き、調査を進める千蔭の前に明らかになってきたのは、芝居の世界に横たわる漆黒の”闇”だった(表題作)-------。

猿若町捕物帳シリーズの第5弾(連作短編集としては3作目)。
主人公の堅物同心・玉島千蔭をはじめ、花魁の梅が枝、女形役者・巴之丞らレギュラー・キャラクターが、各編で存在感を見せる4編からなる短編集。シリーズ第1作が出たのが2001年なので、もう十数年経つことになりますが、捕物帳としての読み心地の良さは全く変わっていません。今作はホワイダニットものの謎解きミステリとしてもよく出来ていると思います。
長屋の差配人殺しが意外な展開をみせる「むじな菊」、髷を切る通り魔の動機を追及する「だんまり」もいいですが、ベストはやはり表題作の「土蛍」で決まり。芝居小屋の変死事件の真相よりも、梅が枝の身請け話から炙り出される”女の情念”にぞっとさせられる。
最後の「はずれくじ」は小品ながらも、ちょっとした叙述の騙りが”どんでん返し”を生むキレのある佳作でした。

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