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ミステリの祭典

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フランス革命殺人事件

作家 磯部立彦
出版日1983年01月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 kanamori
(2016/05/10 18:43登録)
国王ルイ16世が断頭台の露と消えた革命勃発4年目のフランス。王妃マリー・アントワネットと隔離され、タンプル城跡の獄舎に幽閉されていた8歳の王太子シャルルの周辺で、猟奇的な殺人が連続して発生する。一方、褐色の肌をもつ青年貴族ラウルは、王太子を救い出すべく画策するが--------。

フランス革命を背景にした謎解きミステリ。
作者・磯部立彦は、本書にある著者プロフィールでは正体不明の覆面作家となっていますが、のちに男女二人の合作ペンネームと判明しています。フランス革命という18世紀末の未曾有の動乱期を舞台に、史実にフィクションを交え、伝奇的要素とロマンを散りばめながら、フーダニット・ミステリに仕上げた本作は、アマチュア作家のデビュー作品としては、なかなかの出来栄えだと思います。サド侯爵や”三銃士”と名乗る小悪党の男女3人組による王族の誘拐計画とか、王妃の首飾りを巡る陰謀など、サブストーリーも充実しており飽きさせません。
惜しいのは、短い章割りで次々と場面転換を繰り返すため、説明が不十分と思える点があるところです。じっくりと書き込めば、歴史伝奇小説の傑作になっていたかも。
また、歴史モノの面白さに隠れた形になっていますが、謎解きミステリとしても、この”意外な犯人像”は特筆に値します。現場の死体状況が巧いミスディレクションになっているのです。

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