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ミステリの祭典

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合言葉はオヨヨ
オヨヨ大統領

作家 小林信彦
出版日1974年11月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 クリスティ再読
(2016/02/28 13:56登録)
「SRの会」のベストテン選びで、オヨヨ大統領のシリーズが高く評価されてた,,,という話があるのだが、このシリーズは意外なくらいに謎解きがしっかりしていて面白いんだよね。その中でも本作あたりが、謎解き+冒険+ギャグのバランスが取れていて一番面白いのではと思う。
いきなり主人公が密室殺人(ダイイングメッセージのオマケ付き)に遭遇することろで始まるわけだ。で...オヨヨ大統領の手下が本格ミステリマニアで、わざと密室を作って手かがりをダイイングメッセージで残す、という阿呆な話なのだが、それでも密室トリックはちょっと盲点な物理トリックでしかも実行可能だったりする。本シリーズの強みってこういうところだ。
ギャグ・ユーモアなミステリって一段低く見られがちだが、実はリアリティがなくてオバカなトリックでも、上機嫌なドタバタの中ではうまく埋め込むことができるわけで、そういうのがあっけに取られるような盲点をうまく突いていたりするわけだ。「お笑い」で可能なトリックの方が、シリアスよりも実は範囲が広いことになるのかもね。
本作だと船に積まれた麻薬を追って、香港から網走までの追っかけが話の軸である。いわゆる「宝物の移動」パターンだが、本作の仕掛けはかなり出来がいい。そういうノワール趣味なので、本作は日活とか東映のアクション映画の基本知識があるとさらにお楽しみが多い。本作に「きのうのジョー」っていう用心棒が登場するけど、言うまでもなく宍戸錠のパロキャラ(「拳銃は俺のパスポート」とか「皆殺しの拳銃」とか日活最強のハードボイルド俳優だったわけでね)、毛沢東と小林旭を崇拝する香港の警部、おなじみ鬼面&旦那コンビなど、60年代サブカルに強ければそれだけでもタイムスリップ感覚。しかし多分ここら全然ネタが分らなくても十分楽しめるんじゃないかな(まあネタがわからないとドタバタばかり..かもしれないが、オタなネタだと思ってくれ。分るとそもそも緩急がついてリズムがよくなるよ)。
けど作者はそもそも「昭和ヒトケタの心情」がキャッチフレーズな人だから、そもそも評者だと親の世代になるんだよね...すこし感慨。

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