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ミステリの祭典

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銀髪少女は音を視る
音宮美夜(ニュクス事件ファイル)

作家 天祢涼
出版日2016年03月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 人並由真
(2016/06/25 04:25登録)
(ネタバレなし)
 X県警の塩原署にひそかに開設された捜査本部。それは警察に挑戦する謎の犯罪者「ジェネシス」に対して設置された場だった。ジェネシスのため犠牲になった元女性捜査官・小野寺を「おばちゃん」と呼んで慕っていた若手巡査・道明寺一路。そんな彼の前に現れたのは、銀髪の超美少女・音宮美夜。彼女こそは警察の上層部がひそかに高い評価を傾ける共感覚の名探偵「ニュクス」だった。だがそんなニュクスに挑戦するジェネシスの計画は次の段階に進み…。

 待望の「キョウカンカク」の美少女探偵・音宮美夜の5年ぶりの復活、シリーズ3作目の登場である! あぁ嬉しい(と言いつつ、シリーズ第2作『闇ツキチルドレン』はある理由から、あえて手も触れず読んでもいないんだけど~笑~)。
 それで内容は『キョウカンカク』以上に、犯人捜しというより「名探偵対怪人」路線の方に針が振れており、なんか乱歩の通俗長編『蜘蛛男』とかP・マクドナルドの『ゲスリン最後の事件』みたい。
 いや、ちゃんとフーダニット、ホワイダニットの興味は十全に抑えてはあるんだけど、叢書レーベルが変わったせいかフツーのラノベなみのリーダビリティと紙幅のボリュームの軽さ(活字が大きめで約250ページの文庫)ということもあって、あっという間に読み終えてしまう。
 名探偵としての美夜のキャラクターの個性&特性(音感を視覚に変換する共感覚)から、そんな彼女の扱う事件簿がある程度特化したものになっていくのは仕方がないんだけれど、少なくとも『キョウカンカク』を読んだ時には、もっともっと変化球パズラーとしての今後の可能性を感じたんだけどね。
 今回の新作を読むと、良くも悪くも意識的にシリーズ化への欲が出た感じで、内容の方もキャラクターとビジュアルイメージ、物語の躍動感を重視した、ワンクールものの深夜アニメの原作用みたいではある。
 まぁ実際、映像化したらそれなりに面白くなりそうではあるが、単体の作品としての『キョウカンカク』とは、別の方向に行きつつある感触。

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