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ミステリの祭典

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人形(ひとがた)
ジャック・キャフェリー警部シリーズ

作家 モー・ヘイダー
出版日2016年02月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 kanamori
(2016/03/12 18:45登録)
犯罪歴のある精神異常者を収容する医療施設で、”ザ・モード”と呼ばれる亡霊が出没するという噂が職員の間で密かに蔓延していた。上級スタッフのA・Jは、最近連続する患者の不審死が、その亡霊騒ぎと関連するのではと疑い、院長のメラニーに無断で、キャフェリー警部に相談するが---------。

エドガー賞を受賞した「喪失」に続くジャック・キャフェリー警部シリーズの第6作。
精神科の医療施設を舞台にした謎解きミステリという点では、クェンティン「迷走パズル」、タッカー・コウ「蠟のりんご」などを連想させますが、キャフェリーがこの事件に関与してくるのは、小説の半ば200ページを過ぎたあたりから。前半は、施設職員のA・J・ルグランデ視点のメインの物語と、キャフェリーが担当する女性失踪事件が交互に並行して描かれます。キャフェリーと潜水捜索隊の女性隊長フリー・マーリーが絡むそのサブ・ストーリー部分は前作から続くエピソードで、メインの事件との関連性がなく、シリーズで読んでないと事情が分かりずらい面があります。前作からの継続的な要素が強すぎるのは、当シリーズに共通する難点ですね。
とはいっても、直近に療養所を退院した元患者と過去の猟奇的な事件に焦点があてられる後半は、予期せぬ展開の連続で、高いリーダビリティが最後まで持続します。亡霊ネタや呪いの人形というホラー・アイテムが出てきますが、初期作ほどのサイコ色はないので、作者の作品のなかではわりと万人向けかもしれません。

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