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ミステリの祭典

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探偵作家は沈黙する
平井骸惚此中ニ有リ

作家 田代裕彦
出版日2015年10月
平均点4.00点
書評数1人

No.1 4点 名探偵ジャパン
(2016/08/01 13:31登録)
「懐旧調(レトロ)で郷愁的(ノスタルジック)にして軽妙(ポップ)。すこぶる愉快な探偵小説なり。満足至極」
私ではなく、帯に書かれていた有栖川有栖の推薦文です。有栖川にこんなことを書かれたら読まないわけにはいかないでしょう。

この推薦文でハードルが上がったわけでもないですが、期待していたほどの面白さはありませんでした。
全九章のうち前三章を使って、主人公が現在に至った境遇と登場人物の紹介が行われていることから、キャラクター性を強烈に意識した作品だと分かります。
あとはそのキャラクターに負けない事件を構築するだけだったのですが、いささか地味すぎました。シリーズ探偵第一作で扱う事件としてはどうでしょうか。

乱歩、横溝の時代なら分かります。明智、金田一初登場の「D坂の殺人事件」「本陣殺人事件」ともに短編、中編程度の長さで、事件も特段派手なものでもありません。
ですが、今や平成、というか21世紀に突入してから十数年経ちました。
古本屋の店主とか、喫茶店のバリスタとか、骨大好きな美女とか、流行りの「お仕事探偵」的な「売り」があるのであればいざしらず、ごく普通の探偵がごく普通の事件を解決するだけでは話題にもならないのです。

BLOWさんの書評では、発売予定だった第二弾が中止になったとのこと。これもBLOWさんの言葉を借りれば、「むべなるかな」でしょう。

文章は確かに有栖川の言うように「軽妙」で読みやすく、事件は事前に全ての手掛かりも提示され、小粒ながらフェアなものです。下地は完全に出来上がった作家のようですので、あとはパンチの効いた事件、トリックとキャラクターを生み出せればリベンジも叶うのではないでしょうか。(それが難しいんだけど)

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