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ミステリの祭典

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残穢

作家 小野不由美
出版日2012年07月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 パメル
(2024/11/21 19:31登録)
作者が綾辻行人の奥さんということを今頃知って興味を持ち読んでみた。
ホラー小説を執筆する作家の「私」は、怪談好きのライターの久保と知り合う。首都近郊にある賃貸マンションに引っ越した久保は、部屋で聞こえる奇妙な音に悩まされていた。怪異の原因を求めて、マンションを調べる二人。やがて調査はマンションの周囲一帯に広がり、時代も過去へと遡っていく。そして次々と明らかになる事件と怪異。自分をモデルにした「私」を語り手にすることで、本書は実話会談のスタイルを踏襲している。これが抜群に効果的。平山夢明や福澤徹三など実在する小説家も登場して、どこまでが作り物でどこまでが本物なのか惑わされて、より一層恐怖が染み入ってくる。作家の実生活に興味を引かれていると、いつの間にか時間と空間を超えて広がっていく怪異と向き合うことになる。
関係者に話を聞き、古い地図で土地の履歴を確認する。主人公たちの調査方法が、常識的なものだけに、そこから明らかになっていく怪異の不気味さが際立っている。また調査が進むにつれ、第三者の立場であったはずの「私」にまで怪異が忍び寄ってくる様子が恐ろしい。
さらに物語の途中で主人公たちが追う怪異が、連鎖の構図になっていることが判明するのだが、これが怖い。とはいえ、退屈と思ったことが多かったことも確かだ。結局のところ過去を振り返り、誰かに話を聞くということの繰り返しで、物語の起伏もそれほどなく終わりを迎えるところに不満が残る。

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