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ミステリの祭典

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死龍(スロン)

作家 藤岡真
出版日2016年01月
平均点4.00点
書評数1人

No.1 4点 人並由真
(2016/06/05 02:46登録)
(ネタバレなし)
 台湾系の裏社会の勢力が広がる新宿周辺。その一角にある歌舞伎町署の対暴力団刑事・千木良は、関東周辺で起きる特殊な殺害方法による殺人事件に関心を深める。台湾裏社会との抗争にも絡んで千木良が意識する、謎の殺人者こと刺客の「死龍(スロン)」。その正体は、彼がよく知る人物なのか?

 今年2016年の新刊。筆者にとって、藤岡作品は『ゲッペルス』以来、ほぼ20年ぶりに挑戦となる。きっかけはAmazonで300以上のレビューを集め、そのほとんどが星一つという異常事態。どう見ても人海戦術による意図的な炎上商法だが、あえてこれに乗せられたつもりで、さぁどんなかな、と読んでみた(笑)。ちなみに本書の売り文句は「仕掛けの鬼才が読者に挑むノワールにして本格!」。あぁ面白そうである(大笑)。
 
 なお本書の巻頭には総数35名もの登場人物一覧が掲載されているが、実際にメモを取りながら重要、あるいは、まぁ重要かな? と思える劇中人物を書きだしていったら軽く50人を超えた。
 それでこの多人数のキャラクターの中でミステリ的な「仕掛け」を行っているのはいいのだが、登場人物の書き分け、またその配置のこなれが悪く、狙いのギミックが効果を発揮していない。いやミスディレクションと××トリックを活用し、どういうサプライズを照準にしてるのかは何となく見える気がするが、小説作りのまずさもあって、それがうまく行っていない感じだ。意外な人物のもうひとつの顔を導き出す終盤の驚きなど、もうちょっと登場人物の叙述にメリハリがあったら、もっともっと快感になったと思うのだが。あぁもったいない。キャラクターが一概に全員平板というわけでもなく、キャラ立ての演出で描かれている人物もいるのだが、その辺が小説の厚みとしてもミステリのミスディレクションとしてもあまり機能していないのもまた残念。
 300以上の星一つを集めた? 話題の一冊は一読後、本を叩きつけたくなるような馬鹿ミステリだったら、まだ良かったのになー。これはそういう方向で語る作品でもない。やはり残念。

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