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ミステリの祭典

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ミス・エリオット事件
隅の老人 「隅の老人 完全版」掲載

作家 バロネス・オルツィ
出版日2014年01月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 nukkam
(2015/12/27 06:19登録)
(ネタバレなしです) バロネス・オルツィ(1865-1947)はハンガリーの貴族出身ですが使用人の暴動によって一家は祖国を離れて英国に帰化したという数奇な経歴の持ち主です。なおバロネスは名前ではなく「男爵夫人」または「女男爵」という肩書きのことで、オルツィの場合は夫が民間出身者なので女男爵と訳すのが正しいです。英国では歴史小説家として名高く、特に「紅はこべ」(1905年)は後に映画化もされ次々に続編が書かれたほどヒットしました。日本では隅の老人シリーズを書いたミステリー作家として有名で、何度も日本独自の短編集が出版されていますが作品社版は3つの短編集全てと単行本未収録だった「グラスゴーの謎」(1901年)のシリーズ全38作を収めたまさに完全全集版です。値段は短編集3冊分どころか6冊分ぐらいしてしまうのですが(笑)、資料的価値は非常に高いです。第一短編集である「ミス・エリオット事件」(1905年)は第二短編集である「隅の老人」(1909年)に収められた1901年から1902年の作品よりも後年の、1904年から1905年にかけて発表された12作が収められています。「隅の老人」の作品と比べると若干ながら登場人物が増えてプロットも複雑になり謎解き小説としての進化が確実に見られます。「<ノヴェルティ劇場>事件」で4人の容疑者から犯人当て推理を試みているのはその一例です。「トレマーン事件」や「<バーンスデール>屋敷の悲劇」もお勧めです。

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