皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
シーマスターさん |
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平均点: 5.94点 | 書評数: 278件 |
No.8 | 6点 | ちょいな人々- 荻原浩 | 2011/12/21 23:17 |
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引き続き小市民たちの俗物ぶりとペーソスをユーモラスに描いた短編集。
個人的に面白かったのは「犬猫語完全翻訳機」と「正直メール」の2連続新製品物語。 この人の本は多くの読書好きの守備範囲の重合部に近い位置にあると思われるものが少なくなく、 「何か読みやすくて面白い本ない?」と訊かれた時、 「旅行や出張に何か手軽な本持っていきたいなー」という時、 この作者の作品をチョイスすれば外す確率はそこそこに抑えられるのではないだろうか。保証の限りではないが。 |
No.7 | 6点 | さよなら、そしてこんにちは- 荻原浩 | 2011/11/30 22:36 |
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さらっと読ませる「軽い笑いと少しのホロリ感あるいは脱力感」の短編集。
さらっと書いているように見えるが、いろいろな世界・・・葬儀屋、スーパーマーケット、イタリアの家庭料理等々についてかなり詳しい描写がなされている。一つならともかく多種多様の業界内部の詳情を背景にした物語を惜しげもなく短編でホイホイと書き放つ・・・こういうところがこの人や奥田英郎は本当に凄いと思う。まぁ二人とも広告代理店勤務とコピーライターを経ている、というのが大きいんだろうけどね。 個人的なベストは「ビューティフルライフ」・・・一番笑えた。まとめはベタだが。 次が最終話の「長福寺のメリークリスマス」・・・二番目に笑えた。この話の主人公のビジュアルイメージ、これは海老蔵さんでキマリ・・ではないですかね? |
No.6 | 6点 | 明日の記憶- 荻原浩 | 2011/06/01 23:35 |
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五十歳にしてアルツハイマー型認知症に罹患してしまった主人公の不安、恐怖、葛藤、絶望、諦念・・・が病状の進行とともにリアルに描かれている社会派的力作。
今後益々深刻化していくだろう介護問題の原因となる疾患の一つでありながら、まだまだ高齢者のボケ、痴呆という認識が蔓延っている本疾患の実態の正しい理解のために幅広く読んでいただきたいとは思う。 山本周五郎賞受賞作。(どんな賞だかよくは知らない) |
No.5 | 7点 | 誘拐ラプソディー- 荻原浩 | 2011/05/27 23:51 |
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人生に絶望したケチな前科者、伊達秀吉が桜の花咲く丘の上で、できるわけもない自殺をしようとモタモタしている間に、彼が盗んで運転してきた車に一人のガキ(男のお子さん)が勝手に乗り込み居眠りをしていた。
秀吉は一喝して追い出そうとするが、その子の身なりを見て考えが一転、「これは神様がくれた千載一遇のチャンスだ」 しかしこの童子こそは南埼玉を牛耳る強大な指定暴力団八岐組組長の一人息子、篠宮伝助だった・・・・・・ ・・・・・・という素敵なツカミの荻原作品なのだから、そのリーダビリティたるや言わずもがなのノンストップサスペンス。 誘拐モノの傑作といえば「大誘拐」や「99%の誘拐」などが挙げられることが多いようだが、本作はドタバタユーモア系でありながらギャグとシリアスのバランスがよく、ややこしい設定もなく、秀吉と伝助、ヤクザ達、中国マフィア、警察官・・・の言動や心情なども適度なリアリティとドラマ性で描かれている。ペーソスやハートウォームもさりげなく鏤められ、物語のまとめ方も亦宜しからずや。とにかく読みやすくて読み止まらない。 「面白い小説を読みたいが何を読んだらいいかわからない、という人にまずはおすすめ」というありがちな帯の文言も本書に関しては妥当な宣伝文だと思う。 |
No.4 | 6点 | 千年樹- 荻原浩 | 2011/05/21 22:46 |
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作者の2番目の短編集。 1本の巨樹にまつわる連作短編集。
8つの作品からなり、各作品とも過去(平安時代?~第2次大戦中)と現代(昭和40年代?~平成)のストーリーが交互に語られるカップリング形式で、巨大なクスの樹が両者を結ぶ時空の交点になっている。 この樹は時に人間たちを暖かく見まもり、時にその愚行をシニカルに眺め、時に冷酷な結末を嘲笑する。 自分は学生時代から「歴史」は苦手で、歴史っぽい読み物といえば手塚治虫の『火の鳥』ぐらいしか読んだことがないが、本書を読んで歴史小説の面白さが少し解かったような気がした。(おこがましながら) ただ折角、幅広く様々な時代を往来する作品集なのだから、最後にはもう少し壮大さを感じさせる作りにして欲しかった。 |
No.3 | 6点 | 押入れのちよ- 荻原浩 | 2011/05/16 23:42 |
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作者の初の短編集らしい。
ファジーな短編集である本書をあえてジャンル分けするなら「ホラー&サスペンス」になるのだろうが、「怖さ」とか「ゾクゾク」を感じる話は殆どなく、「ゆる怪談」「ブラックコメディー」「メルヘンチックファンタジー(?)」といった印象の話が並んでいる作品集になっている。 本短編集の中で最も異彩を放っていると感じた作品は『コール』。 これは混乱するわ。 まぁ、何ということはない話ばかりだが、この「手軽さ」がいいね。 |
No.2 | 6点 | オロロ畑でつかまえて- 荻原浩 | 2011/04/27 21:08 |
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基本的にユーモア系といわれる長編小説って、所々の表現には笑えてもトータルの物語として「面白い」と思えたことが殆どないんだよね。(考えてみれば殆ど読んだこともないが)
それでもこの作者なら・・・・・と期待して本書を手にする。 しかし、 第1章を読み始めてすぐ「しまった、ド田舎のドタバタコメディか、完全に守備範囲外じゃないか」と眼前暗黒感に襲われる。 しかし、第2~4章は東京の広告代理店が舞台となり気を取り直すが、第5~9章の「準備活動」は個人的には面白いと思えるものではなかった。 しかし、「事」が起こり始めてからの第10~最終章はエキサイティングで意外性もある展開で一気に読了させられる。 物語の構成(特に「成功、転落、逆転」)、まとまりもよかったと思う。 安っぽいっちゃあ安っぽいかもしれないが、正直グッときたところもあり読み終わってみれば楽しめた一冊。 |
No.1 | 6点 | 噂- 荻原浩 | 2008/03/01 22:31 |
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夜さんとほぼ同じ感想。
噂ほどの衝撃はなかった。 猟奇殺人を舞台に、警察機構の一歯車として靴をすり減らし続けるヤモメ刑事、彼の中で葛藤する娘への思いと(妻を亡くしてから抑え込んできた)最前線への執着、後家刑事とのコンビ活動、7,8年前の渋谷の女の子達・・・・・・などがリアルに描かれていて読み物としては面白い。 事件に関しては、ガジェットが全てOOOで片付けられるのはイマイチだが、本格ミステリのつもりで書かれた話ではなさそうだから、そこを不満とするのは筋違いかもしれない。 |