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テツローさん
平均点: 7.46点 書評数: 108件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.4 8点 茨姫はたたかう- 近藤史恵 2002/07/20 02:12
 ストーカー問題の部分より、主役の、他人との付き合い方、距離のとり方、自分の周りの世界との接し方、これらの描写が少々身につまされるような感じだった。この問題は女性に限ったことではないと思う。
 ミステリの部分、犯人の豹変振りが変やなと思ったけど、イヤな奴が犯人やったし、力(りき)先生のロジックの披露もあったから、まあ良し。
 探偵チームと主役となる女性ゲストキャラとの、距離のとり方がいい感覚していると思う。それほど深く関わらず、と言って顔も会わさないまででは無い。探偵役を整体師にしたのは、大ヒットですよね。彼ら自身が抱えている問題についても、メインストーリーと遊離することなく、エピソードとして無理無く挿入されてると思う。

No.3 8点 カナリヤは眠れない- 近藤史恵 2002/07/20 01:25
 心の病気に苦しむ女性(この作品では買い物依存症)が、何とか立ち直るまでを描くのが、おおまかなストーリーだが、彼女が犯罪に巻き込まれていたことが最後に判明する。後半かなり過ぎてからようやくミステリになったという感じ。こういう構成のミステリは、主題となるエピソードがどうしようもないと、ミステリ部分がいくら良くても駄目だが、この作品は大変良い。主役の依存症の描写に引き込まれるし、後に判明する主役を狙う悪意の存在も、なるほど、これがそうだったかと吃驚させられた。
 ちなみに同じ構成のミステリで、加藤薫「アルプスに死す」(オール讀物推理小説新人賞受賞作、「殺意の断層」に収録)も、是非挙げておきたい。

 主役はその女性ゲストキャラで、探偵チームの方が狂言回しだが、このチーム、いい味出してます。職業探偵ではなく、医者(整体師)と助手2人と患者の集まりなのだけど、その設定を上手く活かしてます。探偵役の力(りき)先生の、患者でワトソン役の小松崎雄大に語る一言一言が、全体のテーマを匂わせるようになってるんですよね。このシリーズは、長く続けて欲しい。

No.2 7点 猿若町捕物帳 巴之丞鹿の子- 近藤史恵 2002/07/10 00:23
 時代ミステリ(捕物帳)など、初めて読んだかな。少々ネタばれ有り。
 姉弟相姦や、サド・マゾといった、インモラルなエピソードが所々出てくる。あまり突っ込んだ描写ではなく、テーマでもないので、必然性が感じられず、最初読んだときは「何だ?」と疑問符だった。再読したら、まあ、ゲストキャラの、物語が閉じた後の行く末が決して平坦なものではなくとも、強く生きていくことができるということを感じさせる為の、ワン・ステップだったのだと読めなくも無い。
 ミステリとしては、「ABC殺人事件」の変型、かな?ミス・ディレクションがあまり生きてないように感じた。
 堅物の主人公、玉島千蔭は良いキャラですね。親父さんも子分の八十吉も、良いチームだ。

No.1 4点 この島でいちばん高いところ- 近藤史恵 2002/06/29 01:07
 まず「この作品はミステリーか?」という問い掛けから、始めなければならない。
 無人島に取り残された五人の女子高生が、一人、また一人と殺されていく。サスペンスを主眼に置いた作品かと思ったら、犯人の謎の男が途中から露出しだして、所々で男女間の性暴力のエピソードがはさみ込まれる。また、普段の高校生活を振り返ったりしながら、少女から大人への変質、取り巻く世界への妥協・融合・旅立ちといった心理描写に落ち着いていく。生き残った二人が十年後、「あの頃の私達には、もう戻れない」で、カーテンフォール。
 まとまり、悪いなあ、と…。サスペンス部分の方がおまけで、少女の生・いのちを描くのが、やはり主題だったのだろうか。ただ、その部分が充分にうったえられてるとも読めなかった。400円文庫なのに、テーマを盛り込み過ぎてるんじゃなかったろうか。もう少し文量がいるだろう。どっちかにしぼるべきだったと思う。

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テツローさん
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採点傾向
平均点: 7.46点   採点数: 108件
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