皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
フリップ村上さん |
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平均点: 7.73点 | 書評数: 26件 |
No.2 | 8点 | 浦賀和宏殺人事件- 浦賀和宏 | 2003/08/24 22:44 |
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究極の自己満足勘違い野郎のウサ晴らし罵詈雑言集と見せかけておいて、相手の懐下から巴なげを仕掛けるが如き怒涛の大ドンデン返しに突入。 こいつをメタと評価するならば、なによりも『浦賀ブランド』に対するミステリ文壇守旧派の持つパブリックイメージを逆手にとった構造そのものがキモ。左手で仕込みをする時は右手を見せろ的ミスディレクションの基本を、いつの間にやらシッカリ手にいれてます。最初の10ページ読んで「なんじゃこいつは腹立つなぁ」と思った人ほど楽しめるかも。(ただし、基本としてメフェスト賞を中心とする近年のミステリ界の動きが基礎知識として要求されるあたりは、やっぱり一般向けとは言い難いか……) |
No.1 | 5点 | 時の鳥籠- 浦賀和宏 | 2002/11/26 20:36 |
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採点不能。ある意味10点満点。ある意味0点。間をとって5点という玉虫色の決着である。 ミステリなのか、SFなのかというジャンル分別以前に、おそらく作者の創作意図は、己の心中の《ある気持ち》を表現することにしかなく、そういう意味ではあらかじめ読者オリエンティッドなエンタテイメント性は放棄されていると割り切った方が良いか。 親子の関係性を扱いながら、決して家族を描かず、血の問題=己の出自のみに拘泥しているところからもわかるように、テーマとしては頭デッカチな青年の自意識過剰的自己言及に他ならないわけだが、そいつをここまで異形の物語に変質させた手腕には、唖然とするばかりだ。 不要な寄り道、饒舌、繰り返しが多すぎるという読物としての弱点も、本作品においてはマイナス要因ではなく、他人のユルい悪夢に無理やりつきあわされているような、収まりの悪い酩酊感を読者に与える唯一無二の武器ともいえる。よって評価基準には良い悪いではなく、好き嫌いしか入り込む余地がない。 いずれにせよ、多少の破綻があろうと、とにかく物凄くぶっとんだ話を読みたい方には大のオススメ。 ちなみに前作とは同じテーマの変奏曲のようなもので、両方合わせて興趣が倍増なことは事実だが、単独でも十分楽しめる。 |