皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
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SUさん |
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| 平均点: 5.94点 | 書評数: 85件 |
| No.3 | 6点 | 綺譚集- 津原泰水 | 2025/11/01 20:20 |
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| 神経を患う「私」が遭遇する、少女の交通事故死の顛末を記した「天使解体」、学校の怪談風の「夜のジャミラ」、殺された女の死後の意識と記憶を辿った「玄い森の底から」、公園で兎を飼っている老人たちと、彼らに愛犬を殺された青年の戦いを描いた「聖戦の記録」など15編が収録されている。
文体に対する美意識の高さ、物語が求める「声」を聞き分ける感度の良い耳、夜の静寂の中から幻想を拾い上げる繊細な感覚、口の端から漏れる笑いが似合う歪んだユーモラス。どの作品をとっても作者らしさが出ており、作者の魅力を知るに最適な一冊。 |
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| No.2 | 7点 | 少年トレチア- 津原泰水 | 2024/12/09 19:49 |
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| 沼地に建てられた巨大なニュータウンの緋沼サテライトでは、たびたび残虐な事件が起こる。住人たちの間では、白シャツ学帽姿の少年トレチアがその犯人であると都市伝説的に語られてきた。ある日、崇の友人・竜介が何者かに襲われ、さらには恋人の有希も失踪する。そもそもトレチアとは、崇たちが子供の頃に熱中した動物殺しや殺人を隠蔽するためにでっちあげた架空の存在だった。ところがトレチアの噂はまことしやかに広がり、十年の時を経て気が付けば自分たちが狩られる側になっていたのである。
物語は群像劇として進み、トレチアを自認する小学生や、サテライトを8㎜フィルム撮影する摂食障害の女、怪魚マカラについて調べる落ちぶれた漫画家など多数のキャラクターが入り乱れる。人工的で淀んだ世紀末のベッドタウンを舞台に、多くの謎と恐怖が複雑に絡み合う、幻想的かつ禍々しい怪作。 |
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| No.1 | 7点 | ヒッキーヒッキーシェイク- 津原泰水 | 2023/06/10 21:27 |
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| カウンセラーの肩書を持つ男、JJこと竺原丈吉が集めた四人の引きこもりによって、一つのプロジェクトが発足する。「不気味の谷」を越えることが出来る、架空人物を電子空間上で創り出そうというのだ。
それぞれに思惑が違って一丸とは言い難い状況ながら、彼らは走り出した。発案者のJJ自身にも秘めた意図があり、やがてプロジェクトは予想外の方向へと進み始める。 本書はミステリというジャンルのみに収まる作品ではないが、予想をことごとく裏切るプロットが心地よい。 |
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