皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
びーじぇーさん |
|
---|---|
平均点: 6.22点 | 書評数: 85件 |
No.2 | 6点 | 鶴屋南北の殺人- 芦辺拓 | 2022/11/15 21:43 |
---|---|---|---|
ロンドンで発見された鶴屋南北の幻の戯曲が京都で上演されようとしていた。交渉のために弁護士の森江春策が京都へ赴いたところ、劇場に死体が出現した。江戸と現代、舞台と現実が交錯する謎を森江はいかに解明するか。
現代に事件の謎もさることながら、最も魅力的なのは作中の南北の戯曲。「仮名手本忠臣蔵」の登場人物を借用しながら、原点と史実の赤穂事件とも似ても似つかない、あまりにも不可解な内容となっている。 室町時代に仮託して当時の世相を批判した「仮名手本忠臣蔵」を踏まえて南北がある人物を自身の戯曲で批判し、それが著者自身による現代の世相への批判と重ねられているという三重の入れ子構成が周到。 |
No.1 | 4点 | 綺想宮殺人事件- 芦辺拓 | 2019/08/06 17:33 |
---|---|---|---|
森江春策はある探偵の代理として、琵琶湖畔に聳え立つ綺想宮を訪れる。広大な敷地には時代も様式もばらばらな怪建築が建ち並び、その内部には、人類が生み出したありとあらゆる異形の発明・奇書が詰め込まれている。そして、そこに集う人間たちもまた、奇矯な怪人揃いだった。彼らから、死せる大富豪が未完成の綺想宮に込めた遺志を解き明かすように依頼された森江だが、推理する間もなく、連続猟奇殺人劇の幕が切って落とされた。
「黒死館殺人事件」の再建に、きわめて今日的な意味を見出した本書では、全篇に溢れかえる奇怪なペダントリー、異説怪説の洪水はひとつとして単なる雰囲気作りのガジェットなどではなく、全てミステリ的な必然性を持っている。しかし、それらの伏線はかえってそれら自身を無化し、ついには推理や探偵、本格ミステリ自体をも、ここ何年も本格ミステリを揺るがしてきた問題に、著者ならではの解答を突き付けた、問題作のひとつといえるでしょう。 |