皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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小原庄助さん |
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平均点: 6.64点 | 書評数: 267件 |
No.2 | 8点 | アンダー・ザ・ドーム- スティーヴン・キング | 2017/11/03 13:09 |
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良くも悪くも過剰に物語るのがキングである。
小さな町が突如、透明なドームに囲まれてしまう。空高く、また地中深くまで障壁が及び、かろうじて空気と水と電流を通すのみで、住民たちはパニックに陥り、すさまじい戦いが発生する。 という紹介をするとドームの存在の解明と新たな戦闘を期待してしまうが、それは終盤あっさりと片付けられる。作者の眼目はあくまでも町を舞台にした群像劇にある。住民たちが持つ恐れ、憧れ、悔い、憎しみといったものが異常な状況下で顕在化し、エスカレートしていく恐怖をとことん描いている。そして数十人の人生模様を鮮やかに交錯させていく。 同じくモダン・ホラーの旗手ディーン・クーンツなら急発進、急ブレーキ、急ターンのジェットコースターを体験させてくれるが、キングはあくまでも優しく劇的に進路を変え、住民たちの人生と内面をクルージングする。 クーンツは愛と希望を主人公に即して感情豊かにうたいあげるけれど、キングは感情を表白させつつも象徴の極みへと向かう。 冗長だが、代表作であることは間違いないでしょう。 |
No.1 | 8点 | IT- スティーヴン・キング | 2017/07/10 09:40 |
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デリーという架空の街を舞台にしたこの物語は、1958年と1985年の二つの時間を自在に行き来する。
登場するのは七人の少年と少女。 彼らの子供時代と成人後のストーリーを交錯させながら、デリーという街のある「災厄」が描かれていく。 ピエロ、吸血鬼、ゾンビ、宇宙人、そして巨大な蜘蛛。 ありとあらゆる恐怖のシンボルと同時に描かれるのは、この世界にある現実の恐怖。 子供たちのモンスターとの闘いは、社会的暴力との闘いでもある。 そういう意味でもこの作品は、極めて優れた「社会学小説」と言える。 |