皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
小原庄助さん |
|
---|---|
平均点: 6.64点 | 書評数: 268件 |
No.2 | 7点 | 絞首台の黙示録- 神林長平 | 2018/07/07 10:18 |
---|---|---|---|
死刑執行を間近に控えた死刑囚の思考というショッキングな視点から始まる。彼は最後の意地を見せるかのように、教誨師を相手に、神は虚構だと説きながら死んでいく。ところが・・・。
ある作家が、連絡の取れなくなった父の安否を確認するために久しぶりに帰省してみると、仏壇には自分の遺影が飾られている。しかもそこに、自分そっくりの男が現れ、「自分こそは本物のお前だ」と言い張る。 男は死んだはずの双子の兄なのか。それとも養父を殺した死刑囚の蘇りか。自分が乗っ取られそうな恐怖の中、元死刑囚かもしれない男と一対一で向き合う恐怖。死と自己認識をめぐる観念的な応酬が続くうち、次第に秘密の生体実験の存在が浮上する。 「もう一人の自分」はクローン人間なのか。それとも死刑囚のクローン、あるいは他人の意識を移植された存在なのか。時空も微妙に歪んでいる世界で、教誨師を交えて深まる議論は科学的次元と宗教的・神秘主義的空間が複雑に絡み合い、迷宮の様相を呈する。 自身の体験と主観からしか世界を把握できない不確かな人間は、真実にたどり着けるのか。手に汗握る先には切ない結末が待っている。 |
No.1 | 6点 | フォマルハウトの三つの燭台<倭篇>- 神林長平 | 2017/10/18 15:59 |
---|---|---|---|
最先端科学は難解だ。たとえば人工知能(AI)が人間の知性限界を超える「シンギュラリティー」以降の世界がどうなるのか見通すのは、文字通り人智を超える。あるいはそれは、日常生活と魔術や神話が地続きになったような世界かもしれない。
この作品は、伝説の燭台を巡る物語。この燭台を一つともせば自分自身を知り、二つともせば他者の視線で自分が見え、三つともせば世界の真の姿を体感できるという。 そんな神話ファンタジー風な序文で始まる小説の舞台は、なぜか近未来の長野県松本市周辺。おまけに登場人物の多くはとぼけた中年男たち。そこに伝説の燭台や、角のあるウサギ「ジャカロップ」、そして変な機器たちが登場して、型破りな事件を繰り広げる。 人間と機器たちの対話は、ちぐはぐで漫才のようだが、魔法の燭台が照らし出す世界像は衝撃的なものだ。 |