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みりんさん
平均点: 6.66点 書評数: 270件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.230 9点 球形の荒野- 松本清張 2024/03/20 13:14
年末に松本清張が大好きな祖母と話す機会があった。祖母の選ぶ清張ベスト3は
1位『球形の荒野』
2位『張込み』
3位『ゼロの焦点』である

2位と3位はたびたび他作品と入れ変わるそうだが、1位はずっと不動だと言っていた。
ということで3作品を祖母から借りて読んでみた。(『球形の荒野』は知人に貸したまま戻ってこないらしくて、借りられなかったが笑)

お得意の人間ドラマだけでなく、サスペンスとしても優秀で、退屈しません。多少の瑕疵を吹き飛ばすほどのラストシーンは余韻がすごいです。名作とはこうあってほしいなという思いを強くしたところです。
作品のテーマなどは他の方の書評をご覧になると良いと思います。私には書けません(笑)

祖母への感謝を込めて+1点


【以下ネタバレ感想】



下巻の半分あたりからは怒涛の勢いで読み進まさせられた。とある人物Aが芦村亮一との長いやりとりの中で久美子への心情を吐露するシーンが印象に残っています。果たして元妻孝子はこのまま一生報われないのか。そこだけが心残りです。
ドラマがあるそうで、ぜひ見てみたいですね。京都が舞台ならなおさら…

No.229 6点 張込み- 松本清張 2024/03/20 13:12
【直接的なネタバレはないが、未読の方は読まない方が良い】

張込み 5点
犯人の男の方ではなく、張込みを通して浮かび上がってくる女の内面が主題。こういうのをあまり読んだことがないので新鮮。
 
顔 7点
面白い。とにかく読ませる。「片方がうまくいくと、もう片方の悪事が露呈するかもしれない」みたいなジレンマ、規模は違えど、誰しも一度は経験ありますよね(たぶん)。

声 4点
珍しくトリック的中。

地方紙を買う女 7点
地方紙を買っただけなのに・・・
イイなあこれ 最後の手紙もgood

鬼畜 6点
非常に匂わせる…とにかく匂わせつつ、何も明かされないまま終わる。 他の方の書評によると映画では"その後"も描かれているらしい。気になる。

一年半待て 8点
女性の悲劇的な半生からどんでん返し2捻りまでが無駄なく凝縮されたお話。これぞ短編のお手本とも呼べる一作。

投影 4点
1番トリックらしいトリックが出てくる。題材にあまり興味を持てなかったので…

カルネアデスの舟板 7点
あまりにも身勝手すぎる男。「カルネアデスの舟板」になぞらえる資格はないだろうと突っ込みたくなるほど、殺人の合理性が一切ない。でも不条理の絡み合いらしいので仕方がない。

No.228 7点 ゼロの焦点- 松本清張 2024/03/20 13:11
一物語として面白いです。リアリティを出すための添物として社会の有様を描いているだけで、問題提起が主題にある他の社会派小説とは似て非なるモノだと思いました。
というか自分が全然知らないだけで"社会派"って本来はこちらのタイプの方が多いのかな。だとしたら社会派って誤解を生むカテゴリ分けだなあと…(いや勝手に誤解をしていたのは私の方ですが)

とにかく、一時代を築いた作家の力量を見せつけられたのでした。


社会派推理小説?
ああ、アレね。「日本社会に警鐘を鳴らさないと…」って謎の脅迫観念に駆られた作者が、ソレを意識した"お誂え向きな設定"と作者の主張を代弁させるための"説教臭いキャラ"が出てくる小説でしょ?

と知ったかぶっている私のようなヤツに本作品を読ませましょう。他に存在するかは分かりませんが

No.227 9点 エレファントヘッド- 白井智之 2024/02/12 01:30
年末に本サイトの「みんな教えて」機能にて、よんさん主催の「このミス予想」というとても楽しい企画がありましたね。私はそこで参加者9人のなかで単独最下位を取ってしまいました( ; ; )  そんな私でも読む前から明らかに異彩を放っていた『エレファントヘッド』は的中させましたよ。ドヤ

【ネタバレあります】


白井智之作品は謎解き以外の無駄が一切なく(ほんとか?)、純粋なパズラーとしての密度が尋常じゃないくらい高い。それ+特殊設定のせいで読んでいる間は疲れるけれど、そんな疲れを吹き飛ばすカタルシスがある。今回でいえば最後に明かされるアレがそう。
白井作品史上最高のトリックなだけでなく、特殊設定ミステリ史上最高にして最恐のトリックと言っても過言ではない(はず!)。
ただ、エンタメとしての面白さももちろん保証するが、こんなことを思いつく作者への畏怖が勝ってしまうなあ。シスマ打って読む前に戻りてぇ…
でもハウとホワイのバランスを考えると『名探偵のいけにえ』の方が好みかな。白井作品制覇記念に10点満点にしておこう。

No.226 7点 おやすみ人面瘡- 白井智之 2024/02/09 03:01
うーん面白い。これ3作目なんだねぇ…
3作品続けてこんなに面白いと、作家に対する信頼みたいなものを感じはじめる頃だろうか。本作品まで読まずとも、『人間の顔は食べづらい』『東京結合人間』あたりで既にとんでもない作家が来たと期待感に溢れている当時のレビューを読むとニヤニヤしてしまう。本サイトの楽しみ方の1つ。

【ネタバレあります】






まず、人面瘡の設定は発症した"人間"の生涯を思うと精神的に辛くなるなあ。フィクションだけど、これだけで色々妄想してしまう… この設定が今回の謎解きにどう関わってくるのかはずっと不思議だった。
中学生パートは友情・青春・辛酸。キャラクターが中学生でも、この作者は容赦のない仕打ちを用意します。また、中学生4人が容疑者となって開かれた推理合戦では、意外な探偵役が場を引っ掻き回し、二転三転する真相。一見どれも筋が通っているように見えるのがこの作者の凄いところ。
意外な犯人と救われない結末に+2点

No.225 6点 ミステリー・オーバードーズ- 白井智之 2024/02/05 23:32
「俺、普通にグロイのいけるんだよね」という厨二病的なイキリをしたくなるところだが、『ちびまんとジャンボ』がちょっと本当に読んでてキツい。トラウマレベルの気持ち悪さ。
虫が苦手な方はやめておいた方がいいでしょう。

【ネタバレあります】





『グルメ探偵が消えた』 6点
珍しく外国舞台 「目には目を 歯には歯を」の精神大事ですね。真相がややずるい気も。
『げろがげり、げりがげろ』 8点
中盤の衝撃のタイトル回収に爆笑。いやーさすがですねぇ、しっかり騙されましたよ。すこーしだけ(色んな意味で)感動するラスト。
『隣の部屋の女』 5点
なんか普通。いや騙されたけど。あまり白井作品らしくないサスペンス寄り(?)の作風。なんか似たような真相の作品を読んだことある気がするなあ。連城か?
『ちびまんとジャンボ』 5点
読むのキツかった。ふつうにフナムシ過剰摂取で死なないの?って思った。
『ディティクティブ・オーバードーズ』8点
「完全幻惑」「事実幻惑」「虚偽幻惑」を分類し、消去法で犯人を特定する発明的ロジック。難解すぎて一部諦めたが『東京結合人間』のドミノ倒しロジックと同じく、よく思いつくなと感心です。

No.224 8点 死体の汁を啜れ- 白井智之 2024/02/04 19:14
おーっとこれは白井智之ベスト短編集に間違いなさそうですよ。うろ覚えだが「お前の彼女は二階で茹で死に」「名探偵のはらわた」よりトリック重視で、その辺が気に入ったのかも。

【ネタバレがあります】





中でも「死体の中の死体」がベストオブベスト。なぜこんなアイデアが思いつくのか?もしかして作者5人くらいいる?
次点で「膨れた死体と萎んだ死体」「何もない死体」も短編とは思えない満足度。平均だと6〜7点だが、傑出している作品を大きく評価して8点付けます。
オチの勘違いも良い。珍しく使いまわせそうなコンビが出てきたので続編どうでしょうか?

No.223 7点 好きです、死んでください- 中村あき 2024/01/26 12:08
こういうのにあと何度自分は騙されるのでしょうかねぇ… 
現代チックの読みやすい文章に密室+首無死体+恋愛リアリティーショー 当然エンタメ性◎
巻頭の「恋愛と殺人においてのみ、人は今も誠実である」 この作品にピッタリな言葉ですね。


*ちょいネタバレ*






ちと砂飲み込みすぎじゃない?

No.222 6点 そして誰も死ななかった- 白井智之 2023/12/22 15:07
「死者が蘇る世界で謎解き」ってのを最初に考案した作家は誰なんでしょうね。七回死んだ男か生ける屍の死か?それとも海外作家が遥か前から書いていたのか気になるところ。
話が逸れましたが、この作者の割には普通寄りの特殊設定(どういうこと?)ではあるが、相変わらずよくこんな多重推理のアイデアが泉の如く湧き出てくるなと感心する。特に時計と血と亀裂のロジックは分かりやすいしユニークだし面白い。ただ、多重解決ものは最後に明かされる真相が1番ぶっ飛んでいてほしいという願いもあり、トリックも動機も衝撃が薄れてしまった感も否めない。

【ネタバレあり】



「私たちははじめから一度死んでいたのだ」ってヤツ、妙に既視感があるのに何の作品か思い出せない。モヤモヤする。

No.221 5点 コンビニ人間- 村田紗耶香 2023/11/26 13:26
中編くらいのボリュームなので1時間半ほどで読み終わります。

【ネタバレします】




「現代社会は縄文時代のまま変わっていない」「社会というムラにおいて役割を果たさないものは忌み嫌われ、排除される」
コンビニというムラでは自らの役割を全うする働き者の主人公。コンビニの声を聞くために生まれてきたのだと断言し、"普通"の人間から求められる将来・"正常"な社会と決別するラストはもはやホラー。ミステリーではないが面白かった。

No.220 7点 名探偵のはらわた- 白井智之 2023/10/28 22:54
津山30人殺しをモチーフにしたミステリはこれで3つ目ですが、どれも当たりですね。


【ネタバレがあります】


今まで読んできた白井作品は根っからの悪人が語り手であることが多かったのでこんなに真っ当なヤツは初めてな気がする。あと『名探偵のいけにえ』と話が繋がっているとかいないとか聞いていたんですが、いけにえの方をだいぶ前に読んだせいでどこが繋がってたんだ?って思い出せなくてモヤモヤしてます。読み直すか…

神哭寺事件 6点
心理アリバイトリック+オカルト特殊設定の導入。いつもより鬼畜猟奇趣味は控えめではある。

八重定事件 8点
だと思っていると、やって来ましたよ
受け渡しのシーンの絵面を思い浮かべるとシュールすぎる。

農薬コーラ事件 7点
少々ズルいミスリードと人間消失。子供の頃、親から外に放置されてる飲み物を飲むなと執拗に忠告されたのはこの事件のせいだったのか。

津ヶ山事件 7点
どこまで元の事件から改変を加えているのかは寡聞にして知らないが、こういう実際の事件に新たな解釈を施す試みは面白い。

ところで表紙の武装した女キャラはいったい誰やねん…

No.219 6点 笑え、シャイロック- 中山七里 2023/10/26 20:43
不良債権の回収を務める渉外部の銀行員が中心のお話。横山秀夫『クライマーズ・ハイ』とか池井戸潤と同じように"プロフェッショナル-仕事の流儀-"系。

【ネタバレがあります】



回収担当として辣腕を振るう上司山賀からその志を受け継いだ主人公結城が如何にして理不尽な不良債権を回収するのか楽しめます。主人公と相対する債権者も画家や技術職社長、新興宗教、ヤクザと幅広く、銀行事情について非常にタメになるし面白い。
ミステリとしては一応殺人事件は起こるが少々無理やりのフーダニット。ミステリ要素は無理に入れなくても、ずっと山賀と結城の2人コンビでやっていっても良かったんじゃないかなあと。エピローグの締め方は素晴らしい。
仕事の流儀系では今のところ一番好きかも。

No.218 7点 お前の彼女は二階で茹で死に- 白井智之 2023/10/22 01:48
正直いうと短編集ってあんまり心踊らないんだよねぇ。でもこの作品の密度は異常です。短編でも多重解決を徹底するのってふつうに頭おかしいと思うんだけど、どうなってんのこの著者。今最も脳内を覗き見したい作家ランキング堂々の第1位。
いつもの謎比喩と全編にわたる"ゲロキモロジック"に加えて、やたら記憶に残るネーミングセンス(大耳蝸牛、ヒコボシ、まほまほ…etc)が楽しめる。

【ネタバレがあります】




『ミミズ人間はタンクで共食い』『アブラ人間は樹海で生捕り』の2つはノエルが○したのがどちらかという前提条件で推理がガラリと変わるのすごいね。よう思いつくわこんなん。
『トカゲ人間は旅館で首無し』では純密室+雪密室。そして何の思い入れもなさそうに惜しみなくコロされてしまうあのキャラ。もっと見たかったよミミズ女探偵。
『水腫れの猿は皆殺し』はおもしろトリックと連作短編だからこそできる少々強引なサプライズ。ですが今まで相棒も探偵も容赦なくコロしてきたお話だからこそ生きる仕掛けだと思います。
『後始末』では『ミミズ人間はタンクで共食い』という原点に戻る綺麗な幕引き。お見事。

ヒコボシが最後にナンカイイヤツ感を出すのとお咎めなしなのがちょっと不満だったかな。

No.217 9点 adabana -徒花-- NON 2023/10/19 01:31
雪積もる小さな町で、猟奇的な殺人事件が起こる――。身体を切断された被害者は女子高生・五十嵐真子。そして、犯人として警察に自首して来たのは、同級生の藍川美月。犯行を供述する美月だが、そこにはある違和感が…!? 闇に抗う2人の少女の“秘密”をめぐる、リアル・サスペンス!!
(Amazonより)

(上)(中)(下)3巻構成の漫画です。本当に読むのが辛いですよこの作品。
どこかリアリティのある物語と絵の力が相まって、ラスト12ページを読んだ時の感情は私の言語力では伝えきれません。あまりのやるせなさに数日は引き摺る物語でした。ミステリ的サプライズは乏しいですが、小説では味わえない漫画の良さを最大限に引き出した傑作だと思います。
『蝶の墓標』を読んで真っ先にこの作品を思い出したので登録しておきました。

高校生藍川美月が親友だった五十嵐真子を惨殺したと自首するシーンから始まるサスペンス漫画であり、ドキュメンタリー映画のような作品でもあります。NON先生は表情を描くのがとても上手く、回想シーンで真子が容赦なく追い込まれ、段々とやつれていく過程は何度読んでも辛くなります…… 美月は何を考えているのか分からず、百面相のように表情が変わる。その不気味さに引っ張られて読み進めると、(下)で全ての意図が明かされた時にあの時の表情の意味に気付くのです。ストーリー構成の無駄のなさ、そしてわずか3巻にまとめたのも高評価です。

No.216 6点 蝶の墓標- 弥生小夜子 2023/10/18 23:50
苛烈ないじめを受けて夭逝した少年はなぜ最期に微笑んだのか?
自己保身に走る大人の汚さと善悪の境界が曖昧な少年少女の残酷さが生む悲劇。このやるせない気持ちが込み上げる復讐物語は漫画『adabana-徒花-』を思い出します。
蘇芳色の痣を持つ夏野とまだら模様の羽を持つ蝶。果たして羽化して良かったのか…

夫婦において小さな齟齬は骸骨に成長する。その骸骨にお互い気づかないフリをして地下深くに埋めていく結婚生活の危うさがシングルマザー視点から語られたり、女性作家ならではの描写が素敵です。
人間ドラマを求める方にオススメですよ。ミステリ的サプライズはやはりダイイングメッセージの意外性ですかね。
※ジャンルをどれに投票したら良いか分からなかったので、詳しい方いたらお願いします

No.215 7点 少女を殺す100の方法- 白井智之 2023/10/17 19:27
外で読むときはブックカバー必須の物騒なタイトルですね。周りに引かれないように気をつけましょう。
どうやら傑作『名探偵のいけにえ』は著者の抑えきれない猟奇趣味をなんとか封印して、生み出された奇跡の作品だったようです。今作もあまりに容赦のないグロ描写と+α少女趣味が炸裂しています。が、そんなことは減点材料にならないほど白井先生のアイデアの豊富さに圧倒されます。

【ネタバレがあります】





少女教室 7点
挨拶代わりに20人の少女を亡き者にし、見事な消去法ロジックからの倒叙ミステリ。そして意外なwhyと意外な名探偵。一番作者らしい短編かな?

少女ミキサー 9点
理不尽脱出デスゲームの中に本格の香り。今後忘れられない短編になりますねぇこれは。
腸の強度ってこんなにあるの??

少女殺人事件 6点
余りにも斬新な犯人特定ロジック。唯一のメタミステリで1番笑えます。

少女ビデオ 7点
これは読んでて気持ち悪くなるくらいグロい。しかし耐えてでも読む価値あるどんでん返し。
ところで、腸の強度って・・・(以下略)

少女が町に降ってくる  8点
横溝&三津田先生の香り+荒唐無稽すぎる特殊設定。
犯人が○○を殺すために、大変回りくどい方法をとるのですが、「アイデアに酔ってたのよ」の一言で解決です。作者の自白が聞こえてきたような気がして笑いました。

No.214 8点 東京結合人間- 白井智之 2023/10/15 17:06
「白井智之、二十四歳。末恐ろしい書き手である」と綾辻せんせーが帯で賞賛しているが、なんか妙に腑に落ちる。こういうの好きそう。

【ネタバレあります】



プロローグから挨拶代わりの痛覚刺激型グロ描写。読んでるこっちもあそこがいてぇ。
ノーマルマンが2人だという前提から導かれるドミノ倒しロジックは発明的じゃないか?まあ…
大多数の作家がトリックのために特殊設定を作っているのに対して、白井智之は更なるグロを描写するために特殊設定を作ってるんじゃねぇかと疑っていた。が、著者の猟奇趣味で包み隠された奇想極まるトリック。まさに鬼畜設定パズラーにふさわしい。正直なんでこんなに評点が低いのか分からんくらい凄かった。まあ例によって私は1ミリも気付けませんでしたが、ミステリを読み慣れている方にはバレバレっぽいのが減点要素なのかな?乱歩の『孤島の鬼』のような不気味さもあって大変気に入りましたね。

結合人間のビジュアルに想像力を掻き立てられるが、文庫本表紙みたいに横に並んでいるのかな?だとすると身長が伸びるのはどういうことなんやろね。

No.213 7点 甲賀忍法帖- 山田風太郎 2023/10/14 20:20
『甲賀忍法帖』と聞いて思い浮かべるのはあの名曲の方。「下弦の月が♪朧に揺れる♪」という歌詞から始まるが、今回初めて原作を読んでまさにこの作品の主題じゃないかと妙に納得できた。
俺なんてキッズだから"異能力バトル"の先駆けって『ジョジョの奇妙な冒険』だとずっと思ってたよ。1959年にここまで下地が完成していたなんて驚いた。これより前の"異能バトルもの"ってあるんですか…?

心は少年のままなんで、甲賀10人vs伊賀10人が秘術を尽くして命懸けの集団戦をするなんて設定を聞くだけでワクワクしてしまう。少年漫画ではなかなかお目にかかれない能力もあったりして新鮮です。
この作品は本来時代ものとして評価すべきなんだろうけど、その風流を感じ取れないアホな私は異能バトルとして評価する(苦笑) そうするとやはり後発の『ジョジョ』や『ハンターハンター』を読んでいる身としては、(小説と漫画を比べるなんて馬鹿かって話だが)知略を巡らす攻防がなく戦いが単調であり、少々物足りないという評価になる。しかし、異能バトルの先駆けとして大変偉大な作品であることに間違いはなく、山田風太郎に感服です。

No.212 7点 レーエンデ国物語- 多崎礼 2023/10/14 00:12
これまた登録していいか微妙な所ですが『十二国記』が登録されてるしまあ良いよね…?
読んだ感想としては"子供にも見せられる『ゲーム・オブ・スローンズ』"でした。漫画だといっぱい読んできたけど、小説でここまでのハイファンタジーは新鮮。ハイファンタジーゆえに固有名詞が大変多く、読んでる途中のメモも過去最長クラス。小説界で話題沸騰なだけあってちゃんと面白いんだなこれが(ミステリ読みに刺さるかは怪しいですが・・・)

ディティールに拘った世界観の構築とセリフの力強さが素敵だなあと。ここまで練られていると作者が1章では書ききれずに隠した設定は数多そうなので、続編にも期待が高まる一方です。
想い人であり同胞であるユリアとトリスタン
恋敵から永遠の親友同士になったユリアとリリス
この二組の関係が特に好きでキャラクター小説としても楽しめると思います。

以下いいなと思ったセリフ p382より
「レーエンデに来なければ私は自由の意味を知ることもなく、世継ぎを産む道具として消費されていたでしょう。人を愛する喜びも、人を愛する苦しみも知らないまま、絶望の中で朽ち果てていたでしょう。ですからたとえ、時を戻せたとしても私は同じことをします。恐ろしい災禍に巻き込んでしまうとわかっていても、このレーエンデにきてトリスタンと出会い、彼を愛さずにはいられないでしょう」

No.211 7点 麦の海に沈む果実- 恩田陸 2023/10/10 17:55
学園サスペンス+ファンタジー。
【ネタバレあります】


主人公が魔女と呼ばれたり、背後で蠢く巨大な陰謀やホラー要素など『緋色の囁き』やダリオアルジェント監督『サスペリア』と似た舞台設定です。シリーズ前作の『三月は深き紅の淵を』の4章は今作の予告編のような作りになっていたのですね。
ここまで魅力的な世界観を映像的に表現できる著者の手腕に素直に感服しました。過去を顧みない凛とした主人公の選択にはほろ苦い青春小説としても心に深く残ります。リドル・ストーリーではなく最も大きな謎対しては明確な答えを示しますが、細部ははっきりと描かれません(特に学園関係)。
もっとこの不思議に包まれた学園に閉じ込められたい。キャラクター達のその後を見せてほしい。と引き摺らせる読後感。これが恩田ワールドでしょうか。

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