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[ 本格/新本格 ]
そして誰も死ななかった
白井智之 出版月: 2019年09月 平均: 6.25点 書評数: 8件

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KADOKAWA
2019年09月

KADOKAWA
2022年01月

No.8 7点 虫暮部 2024/02/17 11:20
 後半は笑いっぱなし。ここまで来るともうユーモア・ミステリと認定しても宜しい。多重に仕掛けられたロジックは見事なんだか何なんだか、真相解明がどうでもよくなって来る(“爆発” 説が一番好き)。ここまで盛り沢山だとインフレでどの要素も特異点たりえず流されてしまうと言う、それが落とし穴だったか。

No.7 6点 ぷちレコード 2024/02/16 22:59
五人の推理作家が覆面作家の天城に招かれ、絶海の孤島を訪れた。だが、天城の館に主人はおらず、泥人形が並べられているだけであった。往路のトラブルのせいで、この孤島に封じ込められることになった推理作家に、次々と奇怪な死が訪れる。
滑稽なほど残酷な一方で、どこかしら純で同時に異形のルーツに縛られて、多様な推理がロジカルに飛翔する。食事時に読むのは避けたほうが良い描写があちこちにあるが、推理の魅力は抜群。脳が刺激されることこの上ない。

No.6 6点 みりん 2023/12/22 15:07
「死者が蘇る世界で謎解き」ってのを最初に考案した作家は誰なんでしょうね。七回死んだ男か生ける屍の死か?それとも海外作家が遥か前から書いていたのか気になるところ。
話が逸れましたが、この作者の割には普通寄りの特殊設定(どういうこと?)ではあるが、相変わらずよくこんな多重推理のアイデアが泉の如く湧き出てくるなと感心する。特に時計と血と亀裂のロジックは分かりやすいしユニークだし面白い。ただ、多重解決ものは最後に明かされる真相が1番ぶっ飛んでいてほしいという願いもあり、トリックも動機も衝撃が薄れてしまった感も否めない。

【ネタバレあり】



「私たちははじめから一度死んでいたのだ」ってヤツ、妙に既視感があるのに何の作品か思い出せない。モヤモヤする。

No.5 6点 レッドキング 2023/08/19 22:14
作者の第五(前作の連作短編集も数えて)長編。これまでのグロあざとタイトルに比べると、グッと「保守的な」標題で、ん?作者、守りに入ったか?思わせて、ところがドッコイ、とんでもSF(?)設定、グロへど描写に、マニアックロジック相変わらず・・よいなぁ。(特に、風俗嬢作家のダミーばかネタ、じつーにgoodよ!「鯨爆発」\(^o^)/って・・)
※マズいことに、この作者のこと、好きになってしまいそうだ・・我ながら不本意ながら・・

No.4 5点 蟷螂の斧 2021/08/23 12:10
ある異色作(特殊設定)のオマージュとなるのかな?。まず計画的な殺人劇にはしっかりとした動機が欲しいところ。また多重推理が好きではないので後半読むのがつらかった。最初の3者の推理は楽しめたが、その後のどんでん返しがまったくいただけない。更にその後が肝となるのですが、もうどうでもいい!?(笑)。推理などできないはずの主人公が急にまともな推理をしだしたのには、かなりの違和感・・・。トリックについてはアンフェアかな?と思い、その部分を読み返したところ、ある重要なことがそこだけ書いていなかった。成程、書かないことでフェアとなるわけですなと感心。まあ、好みの問題なのでこの評価。

No.3 7点 メルカトル 2021/04/11 23:03
覆面作家・天城菖蒲から、絶海の孤島に建つ天城館に招待された五人の推理作家。しかし館に招待主の姿はなく、食堂には不気味な泥人形が並べられていた。それは十年前に大量死したミクロネシアの先住民族・奔拇族が儀式に用いた「ザビ人形」だった。不穏な空気が漂う中、五人全員がある女性と関わりを持っていたことが判明する。九年前に不可解な死を遂げた彼女に関わる人間が、なぜ今になってこの島に集められたのか。やがて作家たちは次々と奇怪を死を遂げ、そして誰もいなくなったとき、本当の「事件」の幕が開く。驚愕の本格推理。ミステリ界の鬼才が放つ、新世代の「そして誰もいなくなった」!
『BOOK』データベースより。

これまでの白井作品との違いは、グロが謎解きに直結していない点ではないかと思います。従って今回は本格度が随分高くなっているようです。特にロジックにより特化しているのは評価されて然るべきじゃないでしょうか。だからと言ってグロ要素が弱いかというと、決してそういう訳ではありません。読者によってはやはり拒絶反応を示す方も多かろうと思いますね。それにしても、導入部の謎は効いています、後半になって、成程あのエピソードはそういう事だったのかと納得させられますよ。

入れ代わり立ち代わり容疑者たちが推理し、最後にとどめを刺すという趣向は面白く、多重推理物としても十分楽しめました。しかし、動機がかなり弱いので、その意味ではどうにも納得しかねますね。
荒唐無稽と言ってしまえばそれまでですが、毎回毎回よくもこのような奇怪なシチュエーションを想定できるものだと感心します。しかも、細々とした伏線の数々が何気なく配置されている点にも注目していただきたいです。この人の作品は万人受けはしないと思いますが、その天才的な発想は十分発揮されており、ファンはやはり必読の書ではないでしょうか。

No.2 7点 まさむね 2020/12/30 11:32
 覆面作家から複数の推理作家に届いた招待状。自らのデビュー20周年を記念したパーティーを孤島で開くとのこと…。
 ふむふむ。導入部までは作者らしい「グロさ」の表現も薄目で、個人的に盛り上がります。で、最後まで読み切って総合的に考えると、「グロさ」は決して薄くない。いや、十分にグロいとも言える。
 それでも、それほど嫌悪感を抱かなかったのは、登場人物達の飄々とした(ユーモラスな?)会話の効果もあるけれど、何といっても、この作品における特殊設定の必要性を受け入れざるを得ないと感じさせられた影響でしょうねぇ。意表をつく設定と転換、そこから派生するロジックなど、グロさ以外の読みどころには魅かれました。作者の作品に拒否感を抱いたことがある方(でも本格好きに限る)こそ、一読をお薦めしたい。でも、嫌な人は嫌かも。
 ちなみに、登場人物達のその後とか、奔拇族のその後とか気になりますねぇ。とある方が交通事故で「死んだ」とき、お腹の中のアレはどうなったのだろう…とかも。

No.1 6点 HORNET 2019/12/01 00:05
 亡き父親の遺品にあった試作的ミステリを自分が書いたことにして出版し、一儲けした似非推理作家・大亦牛汁は、現在はデリヘル店の店長。そんな大亦のもとに、覆面作家・天城菖蒲から絶海の孤島への招待場が届いた。大亦の他にも4人の推理作家が招待され、その中には自店のデリヘル嬢・あいりも。招待に応じて島へ赴いた5人だが、館に招待主の姿はなく、食堂には不気味な泥人形が並べられていた。クリスティ「そして誰もいなくなった」まんまの状況の中、「事件」の幕が開く。

 ゲテモノやら汚物やら、氏の作品らしくあいかわらずグロい。設定も「おやすみ人面瘡」のようなフィクション病理の特殊設定だが、推理はロジカルなのが面白い。可能性の一つ一つを細かな手がかりで潰していくさまは本格さながらで、しかもその仕掛けが二重三重になされている点では緻密さを感じる。ただそれでたどり着く真相がちょっとバカミスレベルの仕組みで、およそ現実的ではないので読者の推理は不可能(だと思う)。ある種の呆れを感じさせながら、巧みに仕組まれた筆者の技巧に関心もさせられる、そんな一冊だと思う。


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