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初老人さん
平均点: 6.80点 書評数: 130件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.110 7点 杉下右京の密室- 碇卯人 2018/12/05 12:22
テレビドラマ「相棒」の主人公杉下右京が単独で2つの密室殺人を解明するシリーズ第三弾。
一つは大学時代の友人からパーティーに誘われ海中展望室を見学の後そこで起きた殺人事件を解明する『大富豪の挑戦状』、二つ目は被害者特注のクライミングジムで起きた、天窓に小さな穴が開いているのみの密室殺人を解明する『壁』の中編二本である。
『大富豪の挑戦状』は、密室殺人もさることながら容疑者の数が多く絞り込みには難儀するだろう。
『壁』は一読しただけで忘れられないような密室の作られ方が印象的である。

No.109 7点 ブラック・スクリーム- ジェフリー・ディーヴァー 2018/11/24 18:47
シリーズ第13作。
物語はニューヨークの路上で男が拉致されその光景を少女が目撃する所から幕を開ける。
今回リンカーンライムは逃亡した犯罪者を追いイタリアのナポリに飛ぶ事になる。
イタリアで出会う個性的なメンバーとのやり取りも魅力だが、なんと言っても連続誘拐事件がこれまでにない展開を見せ、読者はいつも以上に注意深くページを繰る必要があるだろう。
アメリカ領事館から持ち込まれた留学生の暴行事件も調査する事になり、一見すると無関係に見える事件がどのように交差するのか、という所も読みどころの一つだ。

No.108 8点 コフィン・ダンサー- ジェフリー・ディーヴァー 2018/08/26 01:11
最近のリンカーンライムシリーズに出てくるライムは、体の可動域も広がり、心に余裕が生まれたのか他者に対する寛容さが目立つ。
しかしこの作品の頃のライムは違う。いつ発作に見舞われるかわからない中、動かせるのは薬指一本と首から上のみ、以前部下を殺された因縁を持つ凄腕の殺し屋と対等に渡り合おうというのだ。
この作品ではライムの冴え渡る推理を堪能出来、しかも相手もライムに勝るとも劣らないプロの殺し屋ということで、もう面白さは保証されたようなものだ。
ただ唯一の気がかりは初期の作品ということで、どんでん返しの効果に既読感を覚える方もいるかもしれないが、それも些末な問題だろう。
名探偵と名犯罪者が繰り広げる極上のゲームをお楽しみ頂きたい。

No.107 4点 オリエント急行はお嬢さまの出番- ロビン・スティーヴンス 2018/06/22 19:57
やはり列車の中の密閉された状況下での殺人が、雰囲気を重苦しいものにしていると思います。勿論作者はそうした状況を打開しようと色々と動きをつけてはいるのですが。
探偵役の少女二人もあまり好ましくは思えませんでした。

No.106 10点 追憶の夜想曲- 中山七里 2018/03/31 10:13
この本は、とにかく色々と凄い。
事件そのものも平凡なようでいて様々に工夫が凝らされているのだが、なんといってもメインは弁護士御子柴礼司の過去に関する怒涛の伏線回収である。
前作から順番に読んでいく事をおすすめしたい。テーマはしっかりとしていながらも、気楽に肩の力を抜いて読める10点の娯楽作である。

No.105 7点 贖罪の奏鳴曲- 中山七里 2018/02/21 12:25
この作者の原作を初めて読んだが、二段階オチ、トリック、主要登場人物のほとんど全てに見せどころを用意してある点など複数の要素が綺麗に決まり、上手く着地している。
続編があり、既に文庫化されているとの事だが、そちらの作品を読む事があればおそらく8点より下の点数は付けないだろう。

No.104 7点 スティール・キス- ジェフリー・ディーヴァー 2018/01/21 14:02
リンカーンライムシリーズ12作目。シリーズ最新作となる本書では、エスカレーターが誤作動を起こし、床板が開き穴に落ちた被害者がモーターに巻き込まれ死亡。容疑者追跡のため偶然その場に居合わせていたサックスは知人を通じリンカーン・ライムに民事訴訟のための調査を依頼する…といった内容だ。
なんといっても今回のキーパーソンはライムと同じく車椅子生活を強いられていて、ライムに弟子入りするジュリエット・アーチャーの存在だろう。ライムに謎かけをしたり、チェスの勝負を挑んだりと、物語にアクセントを加えている。
事件そのもののどんでん返しについては、いつもの通り上質な驚きが保証されている事は間違いない。

No.103 8点 宿命と真実の炎- 貫井徳郎 2017/08/26 15:52
本書は第23回山本周五郎賞を受賞した前作『後悔と真実の色』の続編として執筆された作品である。
前作をよく知っている立場の私としては物語の行方は勿論、西條のその後を知りたくて手に取った次第だが、期待を裏切らない出来に仕上がっていた。
この作者の特徴として物語の流れを多少悪くしてでも主要な人物に過酷な体験をさせてその人物の心情を深く掘り下げる、というものがあると思う。『後悔と真実の色』ではそれが西條の転落、という形を取って現れていたが、本作でもそのテクニックは健在であった。
前作から登場しているメンバーのうちのある一人が、その特異な能力によって事件解決に寄与するというのも堪らない。
全体として前作同様面白く読めたのでこの点数とした。

No.102 7点 夢幻花- 東野圭吾 2017/05/31 12:46
江戸時代には確かに存在した黄色いアサガオがなぜ見られなくなったのか、という題材に着目しここまでの物語に膨らませた作者の慧眼とイマジネーションの力を素直に称えたい。
夢幻花のタイトルの意味が最後の方になって判明した時の納得感と言ったらなかった。
8点付けようか迷ったが白夜行に7点付けていたので、それに匹敵する作品、という意味でこの点数で。

No.101 8点 ブラウン神父の童心- G・K・チェスタトン 2017/04/05 17:21
古典の書評をする、というのはそれが何であれとても気疲れのするもので、もしかしたら見当違いの事を言っていると思われるかも知れませんがその時はそっと見逃してやって下さい。
さて本書、ブラウン神父ものの1作目ですが、階級闘争や帝国主義批判といったものが作品の中に散りばめられているというのはここの方のレビューを読んで初めて知りました。そのぐらい無知で白紙の状態で当たりました。
ところがそんな私でも全体に渡り採用されているトリックの豊穣さには感嘆せざるを得ませんでした。
トリックももちろん良いのですが、各編に登場する個性的な真犯人たち、またその犯人たちにブラウン神父がどのように寄り添っていくのかも読み所かと思います(もちろん同情の余地のない犯人に対しては割りと冷淡な態度を取ります)。
個人的に気に入ったのは「秘密の庭」、「折れた剣」は勿論ですが、「狂った形」でしょうか。綱渡り的な犯人のトリックに脱帽しました。

No.100 6点 フラッシュモブ- 遠藤武文 2017/02/27 18:19
―その人格、高飛車にして奇矯。世にも無礼なこの男の前に、5つの不可能犯罪が立ちはだかる!―
徹頭徹尾空気を読まず、年上や立場が上の者にも平気で楯突く変人警視正、安孫子弘が探偵役となるシリーズのうちの一冊が本書である。
正直表題作を読んだ時はいまいち乗れなかったし、その他の4作品も余り出来がいいものとは言えなかった。
変人探偵が主人公という設定も手垢のついたものだし、強いてベストを挙げるとすれば視点が次々と入れ替わりスリリングな「場違いな男」だろうか。

No.99 7点 スキン・コレクター- ジェフリー・ディーヴァー 2017/02/18 19:00
本シリーズも数えてみれば11作目。今回はスキンアートと称して殺人行為を繰り広げていく犯人との間で、死闘が展開される。
(以下、少々ネタバレ)



展開の幾つかには唸らされもしたし、感心したのだが、ある程度読めてしまったのも事実(特にモグラ男が作中どのような処理をされるのか分かってからは、物語への関心が急速に冷めてしまった)。
7点という数字にはこれまでに紡がれてきた物語への敬意と思い入れが多分に含まれているものと考えて頂きたい。

No.98 7点 燔祭の丘- 篠田真由美 2016/11/13 14:41
建築探偵シリーズ、堂々の完結である。
最初に「美貌の帳」の表紙に惹かれて手に取り、そこから「未明の家」に遡り順々に読んで来た者にとっては、ある種の感慨を覚えずにはいられない。
主要キャラクターの疑似家族めいた生活の営みが作者の願望を反映したに等しい、現実的に考えてあり得ないと思いつつ読んでしまったのは、ひとえに文章が上手かったからである。
犯人を置き手紙一つで退場させるのも、中々気が利いている。
各々が絵に書いたような、しかし今後に期待を持たせるラストを迎えるのも想定通りで気持ちがいい。
そして最終ページで蒼が自分に纏わる様々なものを脱ぎ捨てて京介のもとに駆け寄るイメージに、不覚にも目頭が熱くなった。
とりあえず篠田先生には、素晴らしい物語の数々を有り難うございます、お疲れ様でしたと伝えたい。

No.97 7点 頼子のために- 法月綸太郎 2016/10/15 00:11
何年も前に読んだもので所々記憶が曖昧な部分があるのだが、手記の真の仕掛けや父親の頼子に対する本当の感情などに気付く事が出来、嬉しくなったものだった。法月探偵の犯人への処置が特に非人道的なものであったとは思わない。全ての謎を解き明かしたと思っていたら更に醜悪な真相がたち現れ…といった構成もグッド。頭の体操にもなり大変お得感のある読書だったと記憶している。

No.96 10点 占星術殺人事件- 島田荘司 2016/09/20 22:58
途中読者への挑戦が挟まれた中々ユニークな作品。今振り返って見て思うのは、再三に渡り差し挟まれる挑戦は自分の頭で考えずに解決編を見ると必ず後悔しますよ、という警告の意味があったような気がする。無論私がその挑戦に対して応える事はなく、それどころか答えを見てもすぐには意味を掴みかねる、といった有様であった。図で丁寧に説明されてやっと理解するに至った次第である。
これからこの作品に接する事になる幸運な読者の方々には、解決編に入る前に、せめて犯人は誰なのか思いを巡らして頂きたい。さもないと私のように答えを読んで大いなる敗北感に打ちのめされる事になる、かもしれない。

No.95 10点 そして誰もいなくなった- アガサ・クリスティー 2016/06/24 02:46
このような作品に対して、今まできちんと向き合ってこなかったのは痛恨の極みだといっていい。おそらく初読時の混乱や驚愕といった感情が邪魔をして、正面から相対する事を、本能的に避けたのだろう。この作品はそれほどまでに畏怖の念を抱くよう読者である私に求める。
この作品のプロットである骨格部分、および物語の進行については大変ムダがなくすっきりした構成ではあるが佳作の域を出てはいない。では何がこの作品の価値を押し上げているのか。当然孤島に集められた招待客全員が死亡したあとの仕掛けである。
だが無論読者のレベルは今や飛躍的に上がってきておりこのトリックに引っ掛かる読者は現在にはそうそういないだろう。
長年に渡り読み継がれており物語自体のはらむ魅力は認めつつ、現代のミステリ読みの基準に照らし合わせると人物造形の平板さやトリックの実現可能性に多少の疑問の余地が残る。以上、自分なりに粗を探そうと粘ってはみたものの、却って作品の価値を高めるだけの結果に終わったようだ。

No.94 6点 杉下右京の冒険- 碇卯人 2016/06/12 21:04
テレビドラマ「相棒」の主人公である杉下右京が相棒不在時に単独で活躍するシリーズ第二弾。
今回は、刑事部長より三宅島にて溺れ死んだ釣り人の検視の命を授かり三宅島空港に降り立った右京。事故か他殺か?判然としないまま、やがて事件を解くカギは18キロ離れた御蔵島にあることが見えてきてー『紺碧の墓標』
証拠品を返却するため、韓国ソウルへ飛んだ右京。そこで耳にしたUFO目撃事件と野鳥の大量死の間に意外なつながりがある事が分かりー『野鳥とUFO』
の中編二話を収録。
前回よりも本格度は落ちるが充実の内容で、特に第二話の真相には当然の事ながら思い至らなかった。声だけの登場ながらあのキャラクターが出てくるというのもファンにとっては嬉しいサービスだ。

No.93 7点 殺意の構図 探偵の依頼人- 深木章子 2016/05/16 12:44
全体的に見て説明口調が若干くどい様に感じた。その事が物語の勢いを殺いでいる様にも思った。
そこを除けば細部に亘る作り込みの精緻さが目を惹き、デビュー作同様、実に達者で練られた作品であると感じた。最後のオチは蛇足のような気もするが、榊原の人間性がエピローグの中に集約されてもいるようで、個人的には興味深いものがあった。

No.92 6点 杉下右京の事件簿 - 碇卯人 2016/03/22 16:21
ご存じテレビドラマ相棒の主人公である杉下右京が相棒の不在時に単独で活躍する、オリジナル小説の第一弾が本書である。
今回は遠く日本を離れスコットランドの蒸溜所の蔵で起きた奇怪な密室事件、或いは事故を扱う「霧と樽」、奄美大島にて確保された暴力団員の護送を依頼された右京だが、現地で思わぬ事態に見舞われ―といった展開を見せる「ケンムンの森」の中編2話を収録している。
「霧と樽」の密室を形作った核は多くの方が比較的容易に見当がつくかもしれない。だが細部の手順迄をも見抜くのは非常に困難である。それと比較して「ケンムンの森」の真相の難易度は低めに設定されている。
総括としては相棒ファンの方もミステリファンの方も両方満足させるようにツボを押さえた作品である事に間違いない。

No.91 8点 十角館の殺人- 綾辻行人 2016/03/07 19:29
今さら書評するのが躊躇われる程の超有名作。
ただ今振り返ってみて思うのはこの作品はミステリの法則に沿ったオーソドックスな作品というよりは、むしろ基本を踏まえた上で当時としては相当に捻りを効かせた異色の傑作という部類に属するのではないか、という事である。
まぁ何にせよ、このようなタイプの作品が広く世に知れ渡ったというのは大変喜ばしい事である。

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