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[ 本格/新本格 ]
頼子のために
法月綸太郎シリーズ
法月綸太郎 出版月: 1990年06月 平均: 6.92点 書評数: 71件

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講談社
1990年06月

講談社
1993年05月

講談社
2017年12月

No.71 6点 みりん 2023/03/30 01:50
ほとんどの作品は別のことを考えながら文字だけを追っていて、数ページ戻るというような事が多々あるのですが、なぜかこの作品はそんなことがなく文字がスラスラ頭に入ってくる。それほど最初の手記から惹きつけられたと言うことでしょうか。

【以下盛大なネタバレ】




「頼子のために」と言うタイトルから犯人の真の動機に献身性を予想させるものの、ひたすら憎悪の物語で後味が悪い終わり方でした。最終的には真犯人が全てを操っていたというオチですが「あなたは頼子の心のひびに恐ろしい妄想を吹き込んだ」「すべてはあなたが仕組んだ」「夫の愛を試すために仕組んだ」など、重要な部分がぼかされており、何より唐突すぎるどんでん返しだったのでその真相に至るまでの布石がもう少しあれば納得感が増して恐怖を感じられたと思います。どんでん返しは唐突である方が良いと言う意見もあると思うので、難しい所ですね。
手記による詐術はよく目にするので、最初から疑ってかかってしまい、真相にそこまで驚けなかったのですがこの本が出版された1990年当初はやはり斬新であったのかなと想像を巡らせます。

No.70 8点 雪の日 2022/12/30 09:59
テンポよく話が展開してくれるのでスラスラ読むことができました。
「悪意」+「絡新婦」といったところでしょうか(本作の方が刊行が先ですが)
猫の件と、通り魔の件が引っかかったので若干減点

No.69 6点 HORNET 2021/01/17 17:11
 著者が学生時代に書いたものを大幅加筆して長編化したものというだけあって、ミステリとしては始めから真相が見通せるものだった。
 ただ、真相解明に行きつくまでの物語自体が結構面白く、予想していた結末ではあったが、それまでの過程を楽しんで読むことができた。

No.68 7点 人並由真 2020/08/18 04:52
(ネタバレなし)
 元版の講談社ノベルス版で読了。30年近く前にどっかの古書店で状態のいい初版を250円で買い、その後ずっと、自室の蔵書の山の中で寝かし続けていた本であった(笑・汗)。

 重厚でシンドそうな物語を予期していたが、あに図らんやリーダビリティは最高級。あれこれ考えつつメモを取りながらも、3時間ちょっとで読了できた。
 遅れてきた読者(他ならぬこの筆者のこと)が一冊ずつ事件簿を消化していくごとに、そのキャラクター像の陰影が深まっていく名探偵・綸太郎。そんな姿は、たしかに新本格版エラリイ。

 とはいえこの作品に関しては最後まで読んで、クイーンだのブレイクだのロスマクだのというよりも、素で一番、シムノンの影を感じたよ。本サイトのレビューを遡って拝見しても、そんなことどなたもおっしゃってはいません? が。

 個人的にはこういう作品、いくらでもウェルカムです。謎解きミステリとしても小説としても、フツー(以上)に面白かった。

 ただまぁ、ボンボンさんがおっしゃっている2つめの疑問は、大いに同感。つーか、それ以前に(略)。

No.67 6点 レッドキング 2019/06/12 22:38
娘を殺した犯人に復讐した父親の「手記」が第一章に置かれていれば、どうしたって「叙述トリック」を疑いたくなり、驚きへの期待値も上がる。で、驚きの真相は、おおよそ想定内だった。
叙述のままに身を任せ素直に驚いて貰える「ハードボイルド探偵物」と違い、捻りに捻った展開を期待される「新本格物」の作者って大変だなあ。
にしてもこの話、「親-子」の愛も「男-女」の愛も、結局は「自己-愛」には及ばないって怖い結論になる。

No.66 6点 ボンボン 2018/11/19 14:56
冒頭の異様な手記を迂闊にも素直に読んでしまい、はじめ法月綸太郎は下手なのかと思ってしまった。お恥ずかしい。手記を基に調べが進み、徐々に複雑な事情が見えてきて、悪夢のような終盤を迎えるという見事な流れだった。
しかし、どことなく安易な感じが拭えない。都合よくとんとん拍子に関係者に会え、皆がどこまで本当か分からないことを順序良くぺらぺらとしゃべり、キャラがそれなりにありそうな人々が次々に使い捨てられていく。(嬰児の血液型は確定できるのだったか?猫は本当にご主人さまのために戦うのか?)
ある種のホラーだと思って読めば、窓を開けてしまう綸太郎も操られていたということでOKになるのだろうか。

No.65 6点 ボナンザ 2018/07/29 20:43
今読むとそれほど意外性は感じないが、無駄ない構成で容赦のない物語を展開しているのではないか。
最初の手記の嘘と最後にそれを操る黒幕まで。

No.64 7点 虫暮部 2018/03/22 14:13
 そういえば四半世紀前、私は本書を読んでジョイ・ディヴィジョン『クローサー』のCDを買ったのだ。ホコ天場面の“ボーイズ・ビー・シド・ヴィシャス”とは田口トモロヲがやっていた“ばちかぶり”の「未青年」のフレーズ。
 結末を朧げに覚えている状態で読み返すと、綸太郎は論理と言うよりかなり飛躍した直感で真相に辿り着いたような唐突な印象を受けた。

No.63 9点 ねここねこ男爵 2017/10/17 20:53
手記=隠蔽工作、なので読者は心の準備をして読むのでそれをどう上回るか?という形式ですが、全部提示した上で見事にそれを達成する本作はこのパターンのベストではないでしょうか。最後の一対一はちょっとあっさり(というか、もっと深めて欲しかった)のでこの点数ですが、きちんと匂わせてあったし、全体として文句なし。

後味の悪さを指摘される方が多いですが、個人的にはあの後味だからこそ、と思います。救いがあったら救われない話では?

No.62 7点 邪魅 2017/03/07 18:43
読後感はかなり悪いですね、しかしそれが最高だとも言えるわけですが


キングを探せや頼子のために、といったように作者のミスリードを誘うかのような、しかしそれでいて作品を的確に言い表した題名のセンスには脱帽ですね

No.61 7点 まさむね 2016/11/08 21:18
 作者にとって最初の転機を迎えた作品との評価が一般的なようです。確かに、「密閉教室」や「雪密室」とは相当にトーンが異なっていて(すみません「誰彼」は未読でして…)、ある意味では新鮮味を、一方では多少の戸惑いも感じつつ、読了いたしました。
 皆様のおっしゃるとおり、後味は何とも言えない苦みが残りますが、非常に読ませる作品ではあることは確か。でも、探偵・法月綸太郎の行動は、いくら何でもやり過ぎではないかと。これって罪にはならないのか。
 ちなみに、個人的には、法月氏の作品は長編であれ短編であれ、ガチガチ本格系統の方が好きだけれども、「それだけではない」力があるからこそ、傑作が生まれていくわけで、その意味でもこの作品は「最初の転機」と言えるのかな。

No.60 7点 初老人 2016/10/15 00:11
何年も前に読んだもので所々記憶が曖昧な部分があるのだが、手記の真の仕掛けや父親の頼子に対する本当の感情などに気付く事が出来、嬉しくなったものだった。法月探偵の犯人への処置が特に非人道的なものであったとは思わない。全ての謎を解き明かしたと思っていたら更に醜悪な真相がたち現れ…といった構成もグッド。頭の体操にもなり大変お得感のある読書だったと記憶している。

No.59 7点 take5 2016/09/25 17:20
文庫の後書きと解説を必読です。作品を読んだ後に意味のある物として印象的でした。
名探偵や文体のミスリードは、目的でしょうか?手段でしょうか?本格についての議論は皆様それぞれ一家言もってらっしゃるでしょうが、
フィクションを読む理由をリアルな世界への影響まで求めたい私には、やはりまずは人間の弱さや思いやらが描けている事が大切です。ですので手段で構わないのです。
それにしても人間の余りにも未完成である事よ。頼子のために、、誰かが誰かのためにという事がこれほど難しくて切ない事だといという事が、描かれている作品です。

No.58 7点 nukkam 2016/07/08 19:12
(ネタバレなしです) 1989年発表の法月綸太郎シリーズ第3作の本書で作者はそれまでに書かれた純粋な謎解き小説とは大きく作風を変化させて評論家や読者を驚かせました。きちんと推理している本格派推理小説であることは変わりありませんが、人間ドラマとしての深みをぐっと増して重厚な雰囲気が漂います。息苦しいほどの悲劇性は賛否両論あるようですがよくまとめられた傑作だと思います。

No.57 5点 パメル 2016/04/04 18:36
冒頭の手記の微妙な違和感から驚愕の真相にたどり着く
深刻な家庭の悲劇が暗鬱した雰囲気で描かれている
虚像に支配された人間が歪んだ論理のまま突き進んでいく
犯人の気持ちは全く理解できない
歪んだ愛の物語で読後感は悪い

No.56 8点 あびびび 2016/02/11 20:45
半身不随のために、「観念」の化け物に…。「頼子のために」という題が吹っ飛んでしまったような気がする。

親も子も、その愛は異常である。初めは、登場人物は普通の精神だと思っていたが、この事件にかかわった人間は尋常ではない…読み終わってそう思った。だから、ずっと物語に緊張感があり、違和感があった。

法月さんは2作目だが、もっと読みたくなった。

No.55 8点 青い車 2016/01/29 17:09
父親による娘の復讐を綴った手記から始まる物語の重さは僕の嗜好とは相容れないものなのですが、ほぼノンストップで読めてしまいました。最後の最後で浮かび上がる真相は強烈な後味の悪さを残しますが、不思議とどぎつい理不尽さや悪趣味さを感じさせません。これだけの悲劇を一気読みさせてしまう点で、法月さんの筆力の向上がしっかり実った作例といえそうです。

No.54 9点 ロマン 2015/10/20 20:27
高2の娘を殺された父親が、自らの手で犯人を割り出し殺害した顛末を綴った「手記」を残し、自殺を図る。これで終わったかに見えた事件だったが、関係者の思惑に巻き込まれ推理作家の法月綸太郎が再捜査に着手するやいなや、複雑な様相を見せ始めていく。さまざまな思惑を絡ませながら二転三転していくスリリングな展開の果てに、当初の人物像をガラリと変えていく“真実”もさることながら、そこから浮かび上がる不憫なまでの悲しき人間ドラマが読み応え十分。その静かで重い余韻が衝撃的に残る傑作。

No.53 7点 斎藤警部 2015/09/09 07:10
後味悪い結末はかなり早い段階で見え隠れしましたが、それでも充分愉しい読書でした。

No.52 6点 haruka 2014/03/05 23:08
真相はある程度予測できたが、法月綸太郎の論理的な推理は楽しめた。終盤までストーリーに惹き込まれたが、ラストの後味は悪かった。登場人物に共感できず、小説としてのリアリティが吹っ飛んでしまった。


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