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虫暮部さん
平均点: 6.28点 書評数: 959件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.28 6点 生者と死者 酩探偵ヨギ ガンジーの透視術- 泡坂妻夫 2020/11/29 15:04
 〈生者と死者のテスト〉について。描写が曖昧だけれど、六人の名前を書くところは隠しておらず、“その中の誰が死者かを当てる”ことが主眼? 隠して書いたら、作中の説明では透視出来ないよね。でも当てるだけなら6分の1の確率だ。場の雰囲気でその程度でも驚く、と言うこと? 良く判らない。
 また、自動書記の内容が同じ文字列のアナグラムなのは何を狙った演出なのか?

No.27 5点 弓形の月- 泡坂妻夫 2020/07/31 12:20
 ミステリをとろとろ煮込んで、半分煮崩れたところでハイどうぞ。スープは珍味だけど具の歯応えは無くなっちゃった。両方の美味さを具有するタイミングで火を止めるのは難しいんだろうなぁ。

 真吹三津雄の血縁つながりでの関係者と、劇団つながりでの関係者が、同じマンションに住んでいて互いにそれと知らずに知り合いになっている。これはどうも御都合主義的。現実には有り得るその手の偶然も、フィクションだと私は気になる。
 本作に限らないが、泡坂作品は隙あらば和服の販促小説になるので苦笑。

No.26 9点 奇術探偵 曾我佳城全集- 泡坂妻夫 2020/06/11 12:24
 なにしろ20年に亘って書き継がれたシリーズなので、こうしてまとまると、ミステリ作家としての泡坂妻夫の全盛期と低迷期が一望に収まってしまうのが罪なところ。

 “奇術は楽しんで見るのが一番いいんです。もっと上手な見方は、その場の雰囲気をもっと楽しくするように、奇術師に協力する”
 判っちゃいるけどやめられない、ネタバレしつつ揚げ足取り。
 「消える銃弾」道具まで作って、明らかに計画的犯行。なのにその道具の後始末は御粗末。持ち出して処分出来なくなった突発的事由、なんてのがあれば良かったのでは。
 「花火と銃声」解決編がちょっと説明不足。①壁の中の銃弾を見付けるのに警察は金属探知機を必要とした。事件当時には更にカレンダーが掛けられていた。それを犯人が自力で発見出来たのか? ②事前に被害者から聞き出しておいたなら、弾痕の位置・カレンダー両方について告げるほうが自然な気がする。その場合、佳城は推理で“(カレンダーは犯人が)予想しなかったもの”と述べているが、その蓋然性は高くないと思う。③犯人は前回の殺人について、死体を秘かに処分する、という方法でとりあえず隠蔽に成功している。今回その手は使えなかったのか?
 「だるまさんがころした」「浮気な鍵」で紹介される錠のマジックや“夢のエキスプレス”は、ただ単に“そういう仕掛けがある道具”ということではないのか。凄いのは作った人であって、所有者がそれを持っているおかげでマジシャンとして評価される、と言う価値観は良く判らない。

No.25 6点 砂時計- 泡坂妻夫 2020/06/02 12:09
 職人モノの一編になかなか鮮やかなミステリ的仕掛けが施されていて、そうすると他の作品にも同系統のものを期待してしまうのが人情ではないか。しかし他の職人モノはあくまで職人モノであり肩透かしを食らった。ならば問題の一編を職人モノの末尾に配しミステリ短編との橋渡しにすべきで、途中に割り込む形の芸能モノ2編は最初に置こう(最後に置くと、ミステリ要素の無さがやはり肩透かしだから)。
 と言う感じに収録順にも配慮してくれると印象がまた違うと思う。ミステリも職人モノも泡坂妻夫作品として同じ扱いで読んで欲しい、みたいな編集意図を感じるがなかなかそうもいかないのよ。

No.24 5点 蚊取湖殺人事件- 泡坂妻夫 2020/05/27 11:38
 実現可能性の低そうなトリックや極端な偶然について、巧みな話術で読者を丸め込んでまぁアリかな~と言う気分にさせる、とはこの作者がよくやる手。しかし本書、ミステリの短編は4作とも、ネタとしては悪くないのだがその話術の効果が弱くて、結果としてなんだかぼやけた話になってしまった。
 奇術・職人モノはオマケってことでまぁいいや。

No.23 7点 斜光- 泡坂妻夫 2019/12/05 12:40
 泡坂妻夫の描くエロスはあまり好きではない。基本的な趣味の違いでこれはどうしようもない。
 本作は良く出来たプロットだし(しかし姿を消した原因が判らないってことはないだろう)、御都合主義的偶然が運命的な天の配剤のように読めるのは人物造形の確かさ故だろうか。それでも濡れ場になるとフッと冷静になってしまう自分がいる。

No.22 6点 ダイヤル7をまわす時- 泡坂妻夫 2019/09/30 10:48
 ミステリ要素のアイデアより小説としての語り口の巧みさで読ませる作品集。こういうものはファンこそ高く評価しなくちゃならないのだろうが、地味な短編ばかり集めたんだなぁと言う読後感。構図の逆転が一番鮮やかに見える「青泉さん」が良かった。
 「芍薬に孔雀」のカムフラージュは(どのカードが重要かは明白なのだから)無意味。と言うより、そのまま放置すれば〝意味不明だが殺人とは無関係”と判断される可能性もあったのに、カムフラージュすることで〝あのカードは犯人がわざわざカムフラージュするほど重要だ”とメッセージを送ってしまっている。

No.21 5点 泡坂妻夫引退公演- 泡坂妻夫 2019/05/20 10:35
 私は泡坂妻夫の現代ミステリのみ愛しているので、否応なしに氏の全ジャンルを縦断して読まされるこの本は有難迷惑なのである。ファンらしからぬことを言うなら"コスト・パフォーマンスの悪い本”。
 ミステリ度低めな短編が多く話そのものにはあまり乗れなかった分、泡坂妻夫の文章の心地良さを再確認は出来たけれど、だからと言って今まで避けて来た時代物や職人物の本に手を伸ばそうと言う気にはならなかった。幾つかの現代ミステリの中では、『煙の殺意』あたりに収録されてもおかしくない「荼吉尼天」が収穫か。

No.20 7点 奇跡の男- 泡坂妻夫 2018/11/05 10:45
 洒脱な語り口に適度な作り物っぽさを漂わせた泡坂節を堪能出来る短編集なのだが、大ネタの表題作が冒頭に配置されているのでそれ以降が相対的に地味に感じられてしまう点が痛し痒し。五百円硬貨の裏表について誤認があるけれど、作者が故人だからもう修正はされないのだろうか?

No.19 6点 迷蝶の島- 泡坂妻夫 2018/05/22 10:55
 恋愛話は爽やかなもののほうが好きなので、私にとって本書などはカロリーが高過ぎる。しかし“痴情のもつれ”を動機にするにはこのくらい濃い恋でないと説得力が足りないか。
 島での死までの描写で、現実と幻覚が恣意的に混ざっているのはちょっとずるいと思う(一応、黒い蝶を見てその人物のイメージが導かれた、という流れが設定されているようだけど)。

No.18 6点 写楽百面相- 泡坂妻夫 2018/03/22 14:12
 必ずしも写楽がストーリーの主軸と言うわけではないので、このタイトルは如何なものか。正体の謎に対してもっとがっぷり四つに取り組んだものを期待してしまったので若干の肩透かし感あり。
 そのせいもあってか、物語の本流よりも、細々としたディテールのほうが楽しかった。時代風俗に関する注釈をあまりせずにすいすい進む筆致は心地良い(が、それを全てストレートに理解するにはいかんせん私の知識が足りない)。

No.17 8点 亜愛一郎の逃亡- 泡坂妻夫 2018/02/13 09:44
 「赤島砂上」で某メフィスト賞受賞作を思い出したり、「球形の楽園」で赤川次郎の某長編を思い出したり。
 「火事酒屋」だけは納得出来ないなぁ。犯人はあんなトリックを弄さずに犯行後さっさと逃げれば良いじゃないか。救助者が2人来る保証もないし。

No.16 9点 亜愛一郎の転倒- 泡坂妻夫 2018/02/05 10:29
  論理の飛躍が楽しい名短編揃い。「砂蛾家の消失」が一番好き。
 「藁の猫」で不満なのは、“開かない扉”“重力を無視する水”等の創意工夫された間違いと比べて、“藁の猫”がよそから持ち込んだだけの単なる異物だ、と言う点。‟藁の猫”である必然性が無い。キャラクターの一貫性を損なっている気がする。ああいう人は凝り性だと思うんだよね。題名にしちゃったものだから尚更それが目立つ。

No.15 9点 亜愛一郎の狼狽- 泡坂妻夫 2018/02/01 11:15
 亜愛一郎シリーズの瑕疵は、まさにその“シリーズである”点だと思うのだ。作者が如何に手を変え品を変え亜の抜け作っぷりや怪しげな行動を描写しても、読者は“このひとが探偵役”という先入観からついつい別枠扱いしてしまう。まっさらな状態で読めたらギャップが更に映えてどんなに面白いことか。
 しかし一方、シリーズゆえにこの愛すべきキャラクターがじっくり育まれたのもまた確かなわけで、痛し痒しなのである。

No.14 10点 乱れからくり- 泡坂妻夫 2017/11/21 11:47
 何度読んでも腑に落ちないことがある。ネタバレありで書いてしまうが、毒のカプセルのトリック。あれは犯人にとってどういうメリットがあるのか(薬の中に毒を一錠混ぜるのと何が違うのか)。出処を探られたら自分に直結する証拠品のカプセルが警察の手に渡るのはやはりリスキーでは。薬瓶の中身が掏り替えられたのは被害者が死ぬ前一日以内、と誤認させられるのでアリバイ工作になる、と言うこと?作中で明確な説明が欲しかった。
 という不満はあるが、とても大好きな作品。全編を貫く騙しの美意識がなんとも愛おしい。

No.13 7点 妖女のねむり- 泡坂妻夫 2017/11/06 10:15
 精緻に組み上げられた幻想的なロマンスとしての評価は出来る反面、愛読者の贔屓目で見ても偶然に頼り過ぎではある。これだけネタがあれば、私でもその気になるだろう。ところでラストがあれでは、死んだ彼女は何だったんだと淋しくなった。

No.12 6点 花嫁のさけび- 泡坂妻夫 2017/08/09 10:19
 ネタバレ大いにアリで書くけれども。
 五章の4。MがI に“もうそろそろ思い当たりやしないか”と告げる内容は、要約すればこう言うことだ。
 “これは君の愛するHを騙して慰謝料を払わせる計画だ。その結果君はHと結婚出来るのだから協力しなさい”。
 それで協力を得られると思ったのだろうか。手駒にそこまで教える必要はないだろうに。愛のことが判っていない奴だと言えばそれまでだが、この場面が非常に滑稽に見える。それも含めて事件の全体像を見直したとき、どうにも作り物めいた、起こる道筋に無い事件を作者が無理に起こしたような印象だ。 

No.11 9点 煙の殺意- 泡坂妻夫 2016/11/08 10:08
 敢て文句をつけるなら「椛山訪雪図」。その絵のイメージが私の心の中に、浮かび上がっては来なかった。あーそういう設定なんですね、としか思えず、犯人が見間違えたと言われても“架空の薬物の特殊な作用を利用したトリック”を読んだような気分。まぁ私の読み方が下手ってことで。 
 「歯と胴」の最後の行にはクラッと来た。収録順だが、コミカル度の高い「開橋式次第」は最後ではないほうが良い。読み返すときはシャッフルしよう。

No.10 8点 しあわせの書―迷探偵ヨギガンジーの心霊術- 泡坂妻夫 2016/09/05 12:06
 この本を参考にして何度か断食の行を試みていますが、毎回2~3日で挫折してしまうのです。

No.9 7点 ヨギ ガンジーの妖術- 泡坂妻夫 2016/08/09 18:01
 「隼の贄」は、カーター・ディクスン『読者よ欺かるるなかれ』に対するオマージュだよね。

虫暮部さん
ひとこと
好きな作家
泡坂妻夫、山田正紀、西尾維新
採点傾向
平均点: 6.28点   採点数: 959件
採点の多い作家(TOP10)
西尾維新(57)
エラリイ・クイーン(47)
有栖川有栖(46)
森博嗣(41)
山田正紀(34)
泡坂妻夫(28)
アガサ・クリスティー(23)
小林泰三(20)
法月綸太郎(19)
島田荘司(17)