虫暮部さん |
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平均点: 6.28点 | 書評数: 959件 |
プロフィール | 高評価と近い人 | 書評 | おすすめ
No.57 | 8点 | 新本格魔法少女りすか 4- 西尾維新 | 2021/03/03 14:10 |
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1巻から一貫して裏表紙に掲げられて来た“なぜ、少女なの?”が、単なる雰囲気モノのフレーズではなく伏線だったとは。力業で世界を丸ごと掻き混ぜるような落とし方は、考えてみると〈刀語〉も〈伝説シリーズ〉もそうだったなぁ。ポカンと口を開けて見届けるしかなかった。
楓のキャラクターは本気で気持悪い。折口きずなの位置付けが中途半端な気はする。最後の行のその後にまた膝を打つネタが。 |
No.56 | 8点 | 新本格魔法少女りすか 3- 西尾維新 | 2021/02/27 13:52 |
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ストーリーとしての動きは少なく前後の巻の橋渡しみたいだが、それでも尚ガンガンぶつかり合うエモーションに泣ける。ゲームの戦略の構成も巧みだと思う。水倉鍵のキャラクターは鬱陶しいけど結構アリ。 |
No.55 | 8点 | 新本格魔法少女りすか 2- 西尾維新 | 2020/12/24 15:42 |
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魔法と言う理の掛け合いで勝負するシーンは、戯言シリーズのバトルより随分読み応えがある。ルールの設定が所詮は作者の掌の上なのだから、都合良く展開可能な弱点を持つ魔法を考えただけ、かもしれないが私にとっては想定外の論理で“その手があったか”と驚かされた。免疫が無いせい? |
No.54 | 8点 | 新本格魔法少女りすか- 西尾維新 | 2020/12/11 12:02 |
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西尾維新は、理性を振り捨てた状態を描くのが実に上手い。また、キズタカの率直な一人称記述をフィーチュアしつつ、彼自身にも処理出来ないぐちゃぐちゃを浮かび上がらせて甘酸っぱい。色んな意味で痛い痛い。
27歳りすか、潤さんと結構キャラが被ってない? あんなに台詞があって1分じゃ足りないでしょ。クトゥルー神話は正典を読んでいないので実はあまりピンと来ない。 |
No.53 | 8点 | 人類最強のヴェネチア- 西尾維新 | 2020/11/23 12:54 |
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物語としては単純だけど、殺し方はえぐいし、モノローグは気持悪いし、髪形は変だし、コレは決して水増しじゃないぞ。“コンコルド効果”なる言葉を西尾維新作品で学んだ身としては、プライベートジェットのコンコルドでヴェネチア入りなんて感無量。 |
No.52 | 8点 | 扇物語- 西尾維新 | 2020/10/30 17:10 |
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“謝罪”に関する考察の物語。これは面白かった、物語ではなくて考察のほうが。“このシリーズまだダラダラ続くんだ”とか思ってごめんなさい。このトリックはアニメ化出来ないね(それを敢えて狙ったんじゃないかと邪推します)。
“夜這い”と言う単語の使い方に違和感。そこまでDV的なニュアンスを含む語ではないと思うのだが……? |
No.51 | 8点 | デリバリールーム- 西尾維新 | 2020/10/05 12:09 |
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Q・delivery room とは「宅配便の集配所」を意味する英語である。○か×か。
Q・西尾維新は実は女性で、自身の妊娠出産をきっかけに本書を執筆した。○か×か。 Q・本書の帯には“新境地すぎる新境地”と謳われているが実際はそれほどでもない。戯言シリーズと忘却探偵シリーズの中間あたりの世界観。○か×か。 Q・本書の映像化は不可能である。○か×か。 Q・本書はとても楽しめた。○か×か。 |
No.50 | 7点 | ニンギョウがニンギョウ- 西尾維新 | 2020/07/21 11:48 |
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意味不明、なのだが此の判らなさには覚えがあり、私には判る気がする。西岡兄妹の漫画の如きものを小説でやってみたかったのではないだろうか。然様な試みは試みられた時点で宙に浮かぶことを約束されており、成功失敗を問う地平とは遠く隔たった場に在るのは言うまでもないのでもう言わぬ。売れているからこそ許された実験。権力の使い方としてはまぁ正しい。
とシニカルなことを嘯く私は気取り過ぎで、実は結構素直に面白い。 |
No.49 | 7点 | りぽぐら!- 西尾維新 | 2020/05/28 11:09 |
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この手の言葉遊び、作者は書くほどにレヴェルアップして楽しめるが、読者はなかなかその楽しみを共有しづらい。思うに本書の場合、禁断ワードがランダムなのが一因で、例えば“ア行禁止”とか“濁音禁止”のようにシンプルならばもう少し親しみ易かったのでは。甘いかな?
純粋に小説として読めば、「妹は人殺し!」が大好き。 |
No.48 | 6点 | 人類最強の sweetheart- 西尾維新 | 2020/05/27 11:33 |
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請負人・哀川潤を主人公にした短編集。①音楽×暗号ネタはいまひとつ、だがオチは効いている。②昆虫食には興味があるので楽しかった。③京都府警のミステリ掌編はそれなりに面白い。しかしアレとアレは痕跡が違うのでは。その場での思い付きの偽装工作だからそこまで考えていない、と言うことでいいけれど、作中で一言フォローが欲しかった。
他の数編は物足りない。とは言え西尾維新の文は齧るだけで楽しいわけで、潤さんの敵でないならすべからく読むべし。誤用じゃないよ。 |
No.47 | 7点 | 掟上今日子の設計図- 西尾維新 | 2020/03/20 12:12 |
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ふわっとしたコアを小ネタの配置とキャラクターで上手に膨らませる、いつもの作風は、爆破予告と言う題材に合わなかったかも。イメージ的に現場はもっと大騒ぎなのに、そのザワザワした感じがあまり無いような。今日子さんと犯人にフォーカスを絞った結果、必要以上にゲーム的な印象になってしまったと思う。犯人の動きは好みなんだけど。
邪推すると、作者は美少年シリーズ完結に当たって、視覚障害について色々と考える機会があったのかもしれない。眉美ちゃんを健気に描き過ぎたとの反省があり、この話はその副産物なのかもしれない。 |
No.46 | 8点 | 美少年蜥蜴- 西尾維新 | 2019/12/26 11:42 |
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講談社タイガ創刊ラインアップの1冊として始まったこのシリーズは、“薄っぺらい文庫本”というレーベル・コンセプト(?)を体現するかの如く、短編サイズのアイデアを舌先三寸で引き伸ばした作品に終始した観がある。そしてそれは、作者の言葉そのものに対する信頼を裏付けとした、少ない材料でどれだけ膨らませることが出来るか、と言う或る種倒錯的ながらも前向きな挑戦だったように思う。次々広げられる無茶な風呂敷にニヤニヤしつつ楽しませて貰いました。
本作でもそれを反省するどころかますますエスカレートさせて天晴れ完結。殆どストーリーはありません、良い意味で。尚、【光編】【影編】とあるが要は上下巻。 |
No.45 | 8点 | ×××HOLiC アナザーホリック ランドルト環エアロゾル- 西尾維新 | 2019/12/12 10:58 |
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CLAMP のコミックをネタに西尾維新が書いた小説。そりゃ当然面白い。実はストーリー性は希薄で、御題を右から左へ動かしているだけなのだが、それでこんなに読ませるとは一体どういう仕掛けなんだか。
しかし短編3本をこのサイズの豪華な書籍に仕立ててこの値段。売れっ子同士の組み合わせなんだからボってやれと言う版元の狙いが透けて見えるような気がする。(ビジネスのことは言うな!) |
No.44 | 7点 | ヴェールドマン仮説- 西尾維新 | 2019/08/14 12:56 |
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“コンプレックスが一切ない彼を書いてみたかった”とは作者の謂。しかしこの屈託の無い仲良し家族が、西尾維新の世界の中に置かれると怖いのなんの。物語を貫く違和感が探偵する視点の無邪気な邪気を炙り出す。“世界シリーズ”から当事者意識を除去したような味わい。
尚、“著作100冊目”とのことだが、リストを見ると結構恣意的に省かれているものがあるので、さほど意味のある謳い文句ではない。 |
No.43 | 8点 | DEATH NOTE アナザーノート ロサンゼルスBB連続殺人事件- 西尾維新 | 2019/07/23 11:20 |
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『DEATH NOTE』は熟読したので、名前を見ればキャラクターの顔が浮かぶ。そんなファンの性質を逆手に取って一本取られた。
原典には“2年前にLの下で働いたことがある”と言う南空ナオミの台詞があるので、それがつまりコレなのだろう。人がポコポコ死ぬ『DEATH NOTE』の中でも、南空ナオミの死は理不尽かつ無念の最たるもので、多大な傷痕を読者(私)に残したものだが、その彼女に再登板の機会を用意するとは粋な真似をしてくれる。 |
No.42 | 7点 | 余物語- 西尾維新 | 2019/04/23 13:56 |
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怪異アリの世界観に於けるそれなりにロジカルなミステリ2編。『少女不十分』にも通じる結構ヘヴィなネタを、しかし本格ホラーの文法ではなく軽妙なキャラクター小説にまとめている(勿体無い?)。斧乃木ちゃんの罵倒も3割増。チラチラ見えるだけの食飼命日子というキャラの使い方は、じらしプレイ? |
No.41 | 8点 | 混物語- 西尾維新 | 2019/03/08 12:07 |
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西尾維新の諸々のシリーズのヒロインと阿良々木暦が作品世界を越境して出会うと言う、ファンの為のお楽しみ企画だが、存外にミステリ度が高い。概ねはデフォルメされた世界観に準拠したバカミスだが、私の見たところ全15編中4編はちゃんとしたミステリにも転用可能。勿論メインはキャラクターの絡みなんだけどねっ! |
No.40 | 7点 | 美少年M- 西尾維新 | 2018/10/26 11:09 |
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どこが探偵団だって感じでミステリ度がこうまで下がり、単なるキャラクター小説になってしまうと、私は好きだ、と言う以外に褒め言葉が思い付かなかったりして。不穏な結末が次巻への期待を掻き立てるが、果たして……?
シリーズ中、表紙は本書が一番。 |
No.39 | 8点 | 掟上今日子の乗車券- 西尾維新 | 2018/10/19 12:19 |
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旅先で次々事件に遭遇する連作短編集。個々のネタはシンプルな思考実験だが、キャラクターと文章力があればそんな素材もこれだけ面白くなるのだと肯定的に読めるのが西尾維新である。長編にしてディテールを加えると破綻しそうな話を短編の型に合わせることで上手く料理していると思う。逆説的なロジックは亜愛一郎シリーズ(泡坂妻夫)に通じるとの連想は強引か。 |
No.38 | 8点 | 少女不十分- 西尾維新 | 2018/07/02 09:12 |
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最近報道された事件を連想させるような場面もあって胸が痛む。変なタイミングで読み返しちゃったなぁ。
シリーズ化しようがない内容なので雑念の入る余地が無かったせいか、非常に純度が高く、西尾維新の諸々のシリーズの隙間を埋めるパテとして十二分に機能している。10年前の出来事を文章化しているという設定ゆえ、現在の自分による突っ込みが時々うるさいがまぁ許容範囲内。作者本人による作家論、と考えるなら筒井康隆に於ける『脱走と追跡のサンバ』に該当する作品である(適当)。 |
虫暮部さん
- ひとこと
- 好きな作家
- 泡坂妻夫、山田正紀、西尾維新
- 採点傾向
- 平均点: 6.28点 採点数: 959件
- 採点の多い作家(TOP10)