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虫暮部さん
平均点: 6.28点 書評数: 959件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.20 4点 奇憶- 小林泰三 2021/04/03 12:59
 作者の持ちネタを組み合わせただけ。お約束の面白さみたいなものはあるが、強い核が欠けており残念。

No.19 7点 ネフィリム 超吸血幻想譚- 小林泰三 2021/02/16 11:51
 なかなか死なない体なのをいいことにやりたい放題。残虐プレイと冷静かつ論理的な文体の組み合わせが笑いを誘う。つまりこの作者の基本的な芸風そのもの。SF的に展開した『ΑΩ』に対してこちらはホラー調だけど、そんなことは枝葉に過ぎないのだ。最初から最後まで血みどろな話で、読み終えて本を閉じたらページの間からドロリと溢れて来た。

No.18 8点 人獣細工- 小林泰三 2021/02/03 12:01
 表題作は、厳しく見れば「玩具修理者」の焼き直し。読み比べると「玩具修理者」はほぼ骨格だけなんだな~。私は肉を纏った「人獣細工」の方が好き。
 「吸血狩り」。この作者にしてはとてもストレート。
 「本」。言語によるソフトウェアが脳にインストールされちゃうことはよくあるよね。これは決して奇天烈なフィクションではないと思う。

No.17 8点 見晴らしのいい密室- 小林泰三 2021/01/15 12:51
 ネタバレしちゃうのだが、「探偵助手」について私はきちんと読み取れているのか自信が無い。
 見た目が似ている二種類の薬がある。取り違えると場合によっては命に関わる。それを防ぐ適切な対策を講じなかったことが“確率の殺人”であると言っている? ――単なる思い込みや怠慢でその程度のリスクが放置されている事例は現実に幾らでもありそうだけどなぁ。まぁ作品のキモはそこじゃないんだけど。
 「囚人の両刀論法」は、会話で示されるロジックよりも、その背後に垣間見える設定の方が面白そう。“委員会”とか“冷凍貨物船で惑星系巡り”とか。

 『目を擦る女』から三篇を入れ替えて再構成したもの。ページ数で言えば半分弱なので、もう別物である。大人の事情なのか。今となってはこんな刊行の仕方は寧ろ贅沢と言うべきか。ザ・ローリング・ストーンズのアルバムの英盤と米盤で内容が違うようなものか(違う)。

No.16 7点 肉食屋敷- 小林泰三 2021/01/04 11:47
 作者曰く“怪獣小説、西部劇、サイコスリラー、ミステリーというバラエティーに富んだ構成”の短編集。確かにその通り。なんだけど、それゆえにこそ、通底する普遍的な小林泰三テイストが剥き出しになっている、とも言える。執拗な書き込みと笑ってしまう変態的怪奇趣味。ぬめっ、とした感じ。好きな色は赤と黒。
 1編選ぶなら私は「ジャンク」。素敵に吐き気がしそうな世界設定だ。

No.15 7点 玩具修理者- 小林泰三 2020/12/27 13:31
 第2回日本ホラー小説大賞短編賞受賞の表題作。詳細な描写を執拗に重ねて気持悪さを醸し出す技は既に出来上がっている。フィニッシュも鮮やかに決まった。但し、今振り返ると、同作者の初期短編群の中で突出したものと言うわけではないと思う。

 併録の中編「酔歩する男」。以前読んだ時と比べ格段に面白く理解出来た。いや、あの時読んだのは本当にこの本だっただろうか? 勿論、そうでないとしたら私が勘違いしただけのことなのだ。

No.14 7点 海を見る人- 小林泰三 2020/12/11 12:08
 本書は小林泰三のブライト・サイドだと思っていたけど、決してリリカルなだけの作品集ではないし、視覚的な想像を膨らませるとなかなかシュールかつグロテスクだし、こりゃあ表紙を飾る鶴田謙二のイラストに騙されていたわ(いいじゃないの幸せならば)。
 どれも面白いが、以前読んだ時と比べると結構“普通”な印象。変な世界の話はいっぱい読んだからね。

No.13 7点 未来からの脱出- 小林泰三 2020/11/03 11:42
 枠組みとしてはSFだが、なかなかミステリ味も濃い一冊。嫌がらせのように使われるロジック、記憶の錯綜による混乱、グロテスクな変形と、正直いつものネタが満載ではある。ただそもそもが特殊な作風だから、それをマンネリズムだと批判するのは違う気がする。寧ろ作者はこのスタイルをどこまでも研ぎ澄ます職人の道を極めようとしているのだな。

No.12 5点 ティンカー・ベル殺し- 小林泰三 2020/07/31 12:24
 このシリーズがこんなに続くとは思わなかった。こうなると評価の仕方も微妙になって来る。つまり、設定を生かしたねじれたロジックやトリックの作り方がパターン化していないか、そして、土台にあるのは他人のネタじゃないか、と言うことである。しかし“アーヴァタール”の設定と既成のメルヘン世界の親和性は高いし、それ自体がコンセプトだし。うーむ。
 本作にはもう一つ問題があって、メインのトリックには先行例(結構知名度あると思う)があるのだ。私はそのへん比較的鷹揚なつもりだが今回はがっかりしてしまった。

No.11 6点 因業探偵リターンズ 新藤礼都の冒険- 小林泰三 2019/03/04 12:30
 謎解き要素はあまりないけど丁々発止の会話劇が楽しい。この作者の定番ネタが幾つも出て来るが、そういう時に“またか”と感じる作家と“待ってました”と感じる作家がいて、小林泰三は明らかに後者。得だね。

No.10 7点 人外サーカス- 小林泰三 2019/02/01 12:02
 版元は“サバイバル・ミステリ”と謳っており、確かに伏線があり種明かしもあるが、そこまで謎解き要素が強いわけではない。殺し合いに関する工夫を楽しむ作品であり、能力が高い&なかなか死なないキャラクターだから色々と無茶な殺し方が出来て小林泰三の本領が遺憾なく発揮されている。しろがねもびっくり、徳さんの仕掛けた罠に拍手!

No.9 5点 パラレルワールド- 小林泰三 2018/08/14 12:59
 混乱した心理をスラップスティックに描写する冴えた筆致と、特殊なルール設定のもとでの攻防戦、というこの作者の得意なパターンで、そりゃあ面白いに決まっているけど、得意技を投入していること自体がお約束で少々物足りないなぁと読者は贅沢にも思うのである。ラスト前の痛い場面は筒井康隆への挑戦、それとも『無限の住人』か?

No.8 7点 ドロシイ殺し- 小林泰三 2018/06/04 10:48
 ドロシイと言ってもセイヤーズではない。虹の彼方の惨事。犯人の隠し方が面白い。
 ところで女王陛下、わたしたちは何語で会話しているのでしょうか?
 ――何でも構わない気がします。
 しかし言葉を用いたトリックであれば言語の選択は重要ではないでしょうか?例えば英語で“身内”は……。
 ――揚げ足を取るものではありません。さあ、この泉の水をお飲みなさい。炭酸水なので、非常に美味なのです。

No.7 7点 失われた過去と未来の犯罪- 小林泰三 2017/10/17 08:52
 全体的にそこまで“犯罪”という要素を前面に出した話ではないので、このタイトルはどうなのか。期待したほどミステリ寄りではない。
 双子の姉妹のエピソードは「双生児」(『完全・犯罪』収録)と同じ基盤を別方向に発展させたもの、だよねぇ。面白くはあるがこういう使い回しは感心しないなぁ。 
 と、引っ掛かる点はあるが、論理の積み重ねがいつの間にか歪でスラップスティックな情景を作り出す手法は粘着質な作者ならでは。“記憶”というテーマは小林泰三SFの特質に合っているのだろう。但し本作はグロ抜き。

No.6 6点 完全・犯罪- 小林泰三 2017/09/25 11:07
 「双生児」。それまでは強引であっても一応論理の積み重ねで転がして来た話に、最後の最後で唐突に不条理な異物(“終わりではなかったの”)が突っ込まれて終幕、というのはやっぱり話がおかしいと思う。しかし、そのひとが嘉穂であれば事の成り行きをペラペラ話す理由も無いんだよね。というか、“そうだ。一つ方法がある。”ってなんのこと?
 「隠れ鬼」「ドッキリチューブ」は前半を読めば後半の見当も付いてしまうが、それでもダレることなく一息に読まずにはいられない文章の気持悪さが素晴らしい。

No.5 5点 クララ殺し- 小林泰三 2016/07/26 18:24
 悪くはないが、二匹目のドジョウを狙ったという感がなくもないし、そうまでするほどの物凄いストーリーかは疑問。世界設定のせいで論理が錯綜し過ぎて、驚くべきポイントで的確に驚けないきらいがある。蜥蜴のビルのキャラクターは好き。

No.4 7点 記憶破断者- 小林泰三 2015/11/02 11:50
 前向性健忘症の田村二吉(!)が、特殊能力を持つ殺人鬼と対決する(!)という話。雲英(きら)というネーミングから察するに『デスノート』へのオマージュ? スピード感のあるストーリーの途中に結構込み入った論理が組み込まれていて引き止められてしまうのが難だが、作品の性質上仕方ないか(止まっちゃうのは私の理解力の問題だし)。
 気になった点。第2章で、コンビニでせいぜい2000円程度の品物のためにアレコレやっているが、それは効率が悪い。「能力」でいくらでも他人からカネを引き出せるのであれば、万引きをする必要は無いだろう。こういう能力の持ち主は、カネに頓着しない性格になるのでは?

No.3 6点 密室・殺人- 小林泰三 2014/09/30 12:20
予めロープで窓から上り下りする練習をしておいた、といっても、その練習自体がうっかりすると命にかかわる危険な行為だよね。死ぬ気なんかなくて皆を驚かせるのが目的、というにはリスクがあまりに大きい。心情が良く判らぬ。 

No.2 7点 アリス殺し- 小林泰三 2013/11/18 14:13
特殊ルールを設定して、しかもそのルール自体をトリックに使うという点では西澤保彦あたりを連想した。
 更に本書に於いては、ミステリ的な解決編の後こそが、小林泰三の真骨頂なのである(愛読者として言っておくと、この人の作風に於いてグロテスクな描写は基本。寧ろミステリ部分のほうが残虐シーンを成立させるための付け足しみたいなものですから)。
 それにしても、アリスって不滅のネタだな~。

No.1 8点 モザイク事件帳- 小林泰三 2011/12/07 17:05
 『大きな森の小さな密室』と改題のうえ文庫化されたものを、同一内容だと気付かず図書館で予約してしまい、せっかくなので再読したところ話を全て忘れており、全編しっかり楽しめた私である。田村ニ吉か。
 随所で暴走する論理(屁理屈?)が面白い。

虫暮部さん
ひとこと
好きな作家
泡坂妻夫、山田正紀、西尾維新
採点傾向
平均点: 6.28点   採点数: 959件
採点の多い作家(TOP10)
西尾維新(57)
エラリイ・クイーン(47)
有栖川有栖(46)
森博嗣(41)
山田正紀(34)
泡坂妻夫(28)
アガサ・クリスティー(23)
小林泰三(20)
法月綸太郎(19)
島田荘司(17)