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虫暮部さん
平均点: 6.20点 書評数: 2209件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.2149 7点 猫物語(白)- 西尾維新 2026/01/12 13:14
 委員長は阿良々木暦を過大評価してない? あんなことやこんなことをやらかす野郎を良い方に解釈し過ぎてない? まぁ再読なので、時系列的にはあれこれは未だ起きてないんだけどね。
 つまりこれは、一人称で過大評価をこれでもかとばかりに書き連ねることで、“私、本気ですよ” とか書く以上に記述者の本気っぷりを表しているのである。羽川さん目が曇っとるな~、熱に浮かされとるな~、と読者に実感させているのである。高等テクニックである。

No.2148 7点 猫物語(黒)- 西尾維新 2026/01/12 13:13
 つい “完璧な委員長” キャラを使ってしまい、シリーズを書き進むにつれて作者は困じ果てたのではないだろうか。
 この世に存在する筈がないものを、設定の主軸の一つに据えてしまったのだから。歪みが集まっても微笑んで際限なく飲み込んでしまう、そのこと自体が歪みなのである。忍野メメに “気持ち悪い” と言わせたのは、作者の本音が漏れたのだと思う。
 本作はシリーズを続ける為の荒療治。毒を垂らして麻痺を麻痺させるみたいに強引に切り替えた。でも羽川さん、やっぱり黒じゃなく清純な白でお願いします。

No.2147 7点 不可思議アイランド- 山田正紀 2026/01/12 13:12
 キャリア十年目、短編集に収録し損ねていたものをジャンル不問で集めた、文字通り “分類不能” な短編集。
 「自殺省」は、山田正紀の中でもああいう類のグレーな不条理さは異色なんだけれど、全キャリアの短編で見ても三本の指に入る傑作だと私は思う。
 一方で挫折の記録(中断したシリーズ)も残っちゃって、つわものどもが夢の跡、である。

No.2146 6点 ハンニバル・ライジング- トマス・ハリス 2026/01/12 13:12
 リトアニアの城に住んでいた伯爵家の聡明な少年は如何にして “怪物” と成りしか。
 シリーズ前作『ハンニバル』でチラ見せされていた過去のトラウマの詳細な完全版である。そして、言ってしまえば、それ以上のものではない。
 物凄く大雑把な見方だが、本書の内容は前作で示された大枠の通りであって、それを上回る驚き、捻り、と言ったものは感じられなかった。まぁそういう感じだよね、と普通に納得。勿論、新たな登場人物によってエピソードに膨らみが持たされてはいるけれど。
 寧ろ気になるのはこの部分より後、レクターが収監されるに至った成り行きだな~。彼も敗北したわけだから。ミッシング・リンクは未だ埋まっていないのだ。

No.2145 5点 銃とチョコレート- 乙一 2026/01/12 13:11
 人も街も、単にどこか異国と言うだけでなく、薄い膜一枚で隔てられているような、もどかしい距離感。主な原因は平仮名と漢字の使い分け方だろうか。
 これは作中作設定みたいなメタな仕掛けがあるな――と確信したが考え過ぎだった。単にもどかしいだけ。
 物語の流れも伏線の張り方も、いつもの乙一作品と比べて遜色は無いのに、限定された枠組みの中の人形劇を観ているよう(ちょっと悪い意味で)。文体って重要だな~と思った。

No.2144 7点 神のロジック 人間のマジック- 西澤保彦 2026/01/04 11:26
 このトリックにはやっぱり某作品が立ち塞がってしまう。もしどちらか片方だけ読むように選び直せるなら、トリックの位置付け、反転の深さ、と言うことで本作を取るかなぁ。捻り過ぎる作者の悪癖が出ていない点も良し。

 “ワークショップ” の推理問題、あの文章から合理的に特定可能な模範解答があるんだろうか? いかようにでも解釈出来そうな印象しかなかったけど。

No.2143 6点 薔薇の家、晩夏の夢- 倉阪鬼一郎 2026/01/04 11:25
 こういうのは好きなんだけど、好き故の弊害で沢山読んでしまったので、ああそういう感じね~、とついパターンで認識してしまう。
 本作はトリック “だけ” で、あまりにもからっぽの世界。“これはあくまで粗筋で、これから物語の細部や人物像を細かく書き込むのだ” と言われたら “あっ、楽しみにしてます” と本気にしそう。まぁ作風なのは判るけれど……。
 暗号は結構なウェイトを占めているが “解きたくなる暗号” ではない。ただ単に “そういうもの” として目の前を流れて行ってしまった。ちょっと残念。

No.2142 5点 笑ってジグソー、殺してパズル- 平石貴樹 2026/01/04 11:25
 普通のミステリなら “成程、上手い手だ” と思ったかも知れない。
 しかし挑戦状を挿むような推理パズル小説となると話は別で、“ズルい” とまず思った。犯人当てを謳うなら、“読者に検証しようがない医学的データは無謬” がルールじゃないの?
 事件の仕掛けは面白い。しかし物語としてあまり面白くならない。余計な装飾を排して “読者との知恵比べ” 的側面に特化した書き方に原因があるのは明らか。作者は犯人当てについて、“読者が解けないものの方が優れている” と思っていたのではないか。
 変な話し方の秘書課長が良かった。もっとやって欲しかったな。

 密室の錠については、“ボタンを押してから部屋を出てドアを閉めても、ラッチが外枠に触れた際に固定が解除されてしまい、鍵はかからない。”と書かれていますので、トリックは必要ですね。

No.2141 5点 狂い壁 狂い窓- 竹本健治 2026/01/04 11:24
 どうも判りづらい。非常に濃厚な文章ではあるが、それが目的化していないか。言葉に事象が埋もれ、事象に人物が埋もれて、結局上手く読み分けられなかった。
 いや、目的化したって構わないが、濃い文章を繰り出しつつも圧倒的に判り易い作品だってあるわけで、本作はそのへんを “やり損なった” のだと思う。

No.2140 4点 聖女の論理、探偵の原罪- 紺野天龍 2026/01/04 11:24
 ネタをぼかして書けるかな? 設定のあざとさも含めて全体としては好きなんだけど、ミステリ的には失敗している。
 ステージ上の事件。予定と違う映像の操作を誰が行ったのか? また、本来なら不要なカメラ機能が何故ついているのか?
 アイスの件。数値化しづらい “冷え具合” を曖昧なまま進めており、あまり綺麗な論理ではないと思う。

No.2139 8点 蜘蛛の牢より落つるもの- 原浩 2025/12/28 16:29
 うわぁ吃驚した。完全に引っ掛かった。でも言われてみればその可能性の方が高い。単なる茶番にもなりかねないところを、“掘り出した女が埋めろと言って生き埋め” と言うイメージのあまりの怖さで全てを凌駕した。私は本作、予備知識ゼロで読めて良かったと思う。グッジョブ!

No.2138 7点 白魔の檻- 山口未桜 2025/12/28 16:29
 現代日本の医療制度に関する内部告発小説にしてパニック小説。犯人特定のロジックは細かくてちょっときつかった。と言うか、スリリングなパニックの展開に気を取られて、人の動きのアレコレまでは頭に残らない。作者の言いたいことは全部書きますと言った感じで、盛り沢山に過ぎる。
 ああいう論理展開が可能なら、殺人事件だけに絞ってもっと純粋なパズラーにしても良いのに。と私などは思ってしまうが……。

 あと、ミステリである以上、町長の件を曖昧なまま残してしまうのは如何なものか。あのエピソード、どうしても必要だろうか?

No.2137 7点 人魚姫- 北山猛邦 2025/12/28 16:28
 ジュヴナイル風な境界領域を背景に、勇気とか信頼とかを上手く描いていると思う。みんなキャラが立っていて良い。感動した自分に驚いた。
 ところで、あんな物理トリックが成立する構造は、そもそもセキュリティ上で問題があるよね(笑)。

No.2136 7点 シュロック・ホームズの迷推理- ロバート・L・フィッシュ 2025/12/28 16:28
 “駄洒落を考えるのがだんだん難しくなり、発表される頻度が減った” と解説にあるが、逆に言えば作者はきちんとネタが溜まるまで堪えていたわけで、濃度は落ちていない。決して出涸らしなんかじゃないよ。

 ボーナス・トラック的な他シリーズ及びノンシリーズの作品も面白い。問題は、前半三分の二でシュロック・ホームズの世界に浸っていたので、他作品の世界観の調整をどうすべきか迷ってしまうこと。
 「ラッキー・ナンバー」はシュロックと似た世界だが、「クランシーと飛びこみ自殺者」は正統的な警察小説だし、「月下の庭師」「よそ者」もやや戯画的だがこちらの世界がベースになっている(筈)。それをついシュロックの気分で読んでしまったので、本来とは違ったイメージになってそう。

 そして一つ突っ込みたいのが表題。当該シリーズに於いて、笑いは物語の中ではなく読者のメタ視点に属している。真面目な顔で変なことをするのを読者が “真面目な顔で変なことをしているな~” と認識するから生まれる笑いであって、作中の人々はそれが変だと認識してはおらずシュロックをあくまで “名探偵” として遇しているのだ。
 であるなら、『迷推理』=“コレはギャグですよ~” な邦題はコンセプトから外れていると思う。格調高く、とは言わないが、『冒険』『回想』と来たのだから原典に倣って『シュロック・ホームズ最後の挨拶』とでもすべきではないだろうか。

No.2135 6点 なんで死体がスタジオに!?- 森バジル 2025/12/28 16:27
 小粒ながら良品。ミステリ的な捻りとしてはさして珍しくもないけれど、上手に組み立ててあって成程ね~と思った。着地は意外におとなしくて、妥当とも無難とも言える。実在のタレント名を幾つも挙げているがTVは観ないので全然ピンと来ない。

No.2134 7点 紗央里ちゃんの家- 矢部嵩 2025/12/23 14:43
 叔母さんの家の異常につい目を引かれるけれど、ふと気付くと語り手の壊れ方が徐々に明かされる過程が更に怖い。乙一『夏と花火と私の死体』に通じる気持悪さ。

 しかし、明らかな曲解ながら、私には語り手が世界を壊しているようにも見えた。語り手が、他者を狂わせたり現実を改変したりする邪眼の持ち主で、叔母さん達は彼に見られたせいでおかしくなった。だから実家にいる姉は電話口で比較的まともだし、会っている時間が短い紗央里ちゃんも影響は少なかった……って、小林泰三じゃないっちゅーの。

No.2133 8点 罪の棲家- 矢樹純 2025/12/23 14:43
 地に足の着いた描写と、オチの鋭い切れ味。“痛い” 話もあるけど。どれが良いとかじゃなくて皆とても良い。
 “各世代の女性を取り巻くミステリ短編集” なる謳い文句に読了後気付いたが、そういう括り方はしない方がいいと思うな~。まぁ女性に関するイメージを上手く利用している部分も、この作者の場合は特に嫌な感じはしない。
 他の本を読む合間に一編ずつ読んだので、各々の味わいがより深まったのかも知れない。

No.2132 6点 吸血の家- 二階堂黎人 2025/12/23 14:42
 ストーリーのあちこちに既視感が散見される。伝統芸能の古典作品を新人が演じて、それを物語の結末まで知った上で観ているような気分。それこそ作中でちょっと言及された能とかね。なので、演者の演技力こそが問題となる。まぁ演芸ならともかく、小説でそれを意義あるものとして成立させるのは大変だ。
 ただ、密室トリックはどれも良いので、それなりにその “意義” を支えているとは思う。

No.2131 6点 迷い家- 山吹静吽 2025/12/23 14:42
 怪異周辺をこまごまと記した解像度の高さが、一方で読み進む推力に若干のブレーキをかけてしまった嫌いがある。
 私としては、妖しい世界に浸るよりも、ストーリー展開をもっと追いたかった。
 迷い家に囚われた心造少年がああいう風になるのは納得だね。

No.2130 6点 変な家- 雨穴 2025/12/23 14:41
 私は、字の本なら文芸作品以外殆ど読まないけれど、ごくたまにハウツー本などを開くと文章レヴェルの差に啞然としてしまう。もうはっきりと濃度が低く、裏側が透けて見えそう。スラスラ読めるのはまぁ良いが、書籍一冊分のページを稼ぐ為の水増しが目に余り、無味のウェーハスを齧っているような気分になる。本書もそんな感じだ。
 つまらないちゃんとした小説よりも面白かったことは認めざるを得ない。でも売れたからってこういうのが幅を利かせるようになったら嫌だなぁ。

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虫暮部さん
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