皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
虫暮部さん |
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平均点: 6.22点 | 書評数: 1716件 |
No.956 | 5点 | 火喰鳥を、喰う- 原浩 | 2021/04/22 13:09 |
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夢の中の情景が繰り返し語られるが、夢=何でもありの設定で怖がるのは難しい。文章が、却って怖さを遠ざけてしまう種類の上手さである気がする。着地点が読めてからは消化試合みたいで、取り返しのつかない領域に踏み込んでしまった怖さが無い。
但し、そうやって“怖さ”にこだわってしまうのはホラーと言う先入観があるからで、現実改変SFとして読めばまた違った楽しみがあったかもしれない。 ところで、“ヤムヲエズ”とか書いてあるし、“火喰鳥”ってアレのこと? その点を敢えて作中では伏せ、しかしタイトルに掲げるってのはなかなか強気じゃないか。 |
No.955 | 4点 | ブラウン神父の知恵- G・K・チェスタトン | 2021/04/20 10:42 |
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核になる謎や逆説を、こういう風な物語にまとめたい、という“意図”だけを提示して、あとは読者に放り投げたよう。第一集より随分落ちる。断片的な興趣があちこち散らばってはいるが、一編の小説として素直に楽しめたのは「紫の鬘」のみ。 |
No.954 | 6点 | エンデンジャード・トリック- 門前典之 | 2021/04/16 12:40 |
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相変わらず文章は硬く、人物の動きは大味だが、建築の話題に限って饒舌になるあたりにはニヤリ。妙な芸風が確立されてはいる。こういう書き方だから成立するトリックだと言う側面もあるし、この人は“本気かどうか判別しがたい大技を使うヘタウマな作家”として自らの道を邁進してもいいのかもしれない。 |
No.953 | 7点 | あいにくの雨で- 麻耶雄嵩 | 2021/04/16 12:39 |
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初読時は刊行順だったので4冊目に読んだ麻耶雄嵩作品。麻耶らしくないな~と思った。
最新作まで一通り読んでまた読み返すと、いやいやこれは非常に麻耶らしいじゃないかと正反対の印象になった。らしいと言うか、ダミーの真相を丸ごとああいう位置に配するのは某作も某作もそうじゃないか。大技を繰り返し使い過ぎじゃないですか? 学園群像劇の体裁を取りつつ、中心の3人以外はノンプレイヤーキャラみたいで、しかしそんな割り切りが寧ろ作品の雰囲気を高めているあたりも麻耶らしい。 |
No.952 | 9点 | 竜の眠る浜辺- 山田正紀 | 2021/04/10 12:48 |
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ほのぼの系山田正紀の最高峰。最高峰も何も、こういう味わいの山田作品はほぼこれだけか。しかし作品リストにこの一冊があるだけで或る種のバランスが生まれている。異色作なのに代表作。
エピローグに至っても事態は全く解決していない。にもかかわらず妙な安堵感に満たされるのは、登場人物を落ち着くべきところに落ち着かせる手際の良さ故か。 但し、今回読み返して、“男女の役割分担”が作品全体を覆っている、とは感じた。勿論そういう時代の作品だからなのだが、普遍的なテーマの中でそれが目立つような。ああいう“ワイルド・ライフ”に於いては役割分担制に回帰してしまうものだろうか。 |
No.951 | 4点 | リアル鬼ごっこ- 山田悠介 | 2021/04/10 12:46 |
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どんでん返しがいつ来るかいつ来るかとドキドキしながら読み進んだが結局来なかった。奇抜な設定と、奇抜ではない展開。 |
No.950 | 5点 | わが師はサタン- 天藤真 | 2021/04/10 12:45 |
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予想を裏切るストーリー展開は良いけれど、辿り着く真相があまり面白くない。“丸ごと偽装だった”ってのをやり過ぎるとこうなる、と私は思う。
第二の目標は友人経由で選ばれたのに、それが黒幕にとって都合の良い人物であるのはおかしい。彼女は相手に協力しているわけで、心情的に一貫していない、もしくは記述不足。暗闇の中で手に触れただけで性別を確信出来る……のはまぁ、ミステリと言うファンタジー世界ゆえだと大目に見てもいいか。 |
No.949 | 6点 | 妃は船を沈める- 有栖川有栖 | 2021/04/04 11:49 |
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良く出来たパズラーだとは思うが、「猿の手」を引用する必要がどれだけあるのか。こういう使い方は好きではない。
催眠術云々が本格的に絡んで来ないのは残念。この作者は某長編(1995年)でアレを使った前科があるので期待(心配)したんだけど。 “催眠術で自殺はさせられない”説に私は懐疑的。試したんですか? と突っ込んでしまう。 |
No.948 | 4点 | 涼宮ハルヒの消失- 谷川流 | 2021/04/04 11:45 |
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始まりがこうなら、どうなって終わるかは概ね決まっているわけで、そこに至るまでのジタバタの描き方として、物凄く面白いと言うわけでは、まぁない。一応“犯人”に関する手掛かりは提示されていて、それはなかなかの盲点だったかも。 |
No.947 | 7点 | 殺意の構図 探偵の依頼人- 深木章子 | 2021/04/03 13:05 |
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最後に出て来る“現場にあるべき物が無い”のロジックは浮いている気がする。探偵の推理の為には犯人のこういう行動が必要、と逆算して付け加えたような。そして、榊原の意図した落としどころは少々不安定では(しかしダディよく我慢した)。
元弁護士の経歴のおかげで法律関係について安心して読めるのはこの作者の強みだな~。 |
No.946 | 4点 | 奇憶- 小林泰三 | 2021/04/03 12:59 |
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作者の持ちネタを組み合わせただけ。お約束の面白さみたいなものはあるが、強い核が欠けており残念。 |
No.945 | 5点 | バビロニア・ウェーブ- 堀晃 | 2021/04/03 12:55 |
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星雲賞受賞作。あっ、この人も小林泰三のように“物理計算しながら書く人”だ。J・P・ホーガンばりの宇宙規模の謎。基地内での秘密めかした展開。
素材としては充分。ただ、なんかどうも、どんくさい。 ハードSFとしての誠実な書き方が、しかし作品の足許に絡みついて、スピード感を殺いでしまった部分がある。同系統でグイグイ読める作品もあるのだから、私のおつむのせいではないぞと自己弁護。 |
No.944 | 8点 | 謀殺のチェス・ゲーム- 山田正紀 | 2021/04/01 10:46 |
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若人2人の逃避行が、物語中盤の“ゲーム”とあまり有機的に結び付いていない。
勝敗の基準が今一つ解りづらい。 両陣営とも似たようなキャラクターが多く紛らわしい。 題名に“謀殺”は変じゃない? しかしグッジョブ。息を詰めて一気に読みました。 |
No.943 | 4点 | 大富豪殺人事件- エラリイ・クイーン | 2021/04/01 10:42 |
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表題作。犯人は、忘れ物を回収しようとして、却ってソレが手掛かりだと教えてしまった。
「ペントハウスの謎」。中国人が登場するのは、ノックスの十戒に対する諧謔? 文庫版解説は面白かった。 |
No.942 | 7点 | 烏は主を選ばない- 阿部智里 | 2021/03/30 12:30 |
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権謀術数渦巻く謀略サスペンスは苦手。否応無しに群像劇になるけれど、私は勢力図の把握が下手だから。
本書でもそれは変わらず、結末の多分大いに驚ける筈のところでピンと来なかった。 面白かったのはやはり含むところ大アリの主従のキャラクター。思惑の交錯。練り込まれた文章は隅々まで余さず味わいたい。 |
No.941 | 6点 | なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?- アガサ・クリスティー | 2021/03/30 12:28 |
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なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?
と言う疑問はなかなか鋭いではないか。そこを疑問として抱けた時点で、(その部分の)真相まであと一歩だ。逆に言うと、死に際にそんな絶妙なヒントを残すのはかなりわざとらしい。 それに限らず全体的に、入り組んだ要素の間をギリギリで御都合主義的に綱渡りしている感じ。但し、なんとなくそれを許容出来てしまう良い意味で緩い雰囲気はあるな~。 ところで、原題は“ Why Didn't They Ask Evans? ”で主語は They 。 これを(早川書房版)“なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?”と訳すと主語が二人称みたいじゃない? 被害者が目の前の相手(=ボビイ)に対して“なぜ、あなたは~?”と問うたみたいじゃない? 勿論、日本語と英語の構造の違いのせいではある。しかし、そもそも読者は翻訳文であることを承知で読んでいるわけで、日本語として不自然になっても原文のニュアンスを優先すべきポイントはあると思う。映えの必要な題名はともかく、本文中の台詞では、二人称ではなく第三者について語っているのだと明確にすべき。他の訳ではどうなんだろう? |
No.940 | 6点 | 涼宮ハルヒの退屈- 谷川流 | 2021/03/30 12:27 |
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短編集。表題作は馬鹿馬鹿しいけど素直に笑えた。
そして「孤島症候群」が題名通りのミステリなのであった。この(ダミーの)トリック、少なくとも私は今までにお目にかかった記憶無し。更に、基本設定ゆえに、どんな不条理な真相が待っているか判らないスリルを読者は(勝手に)味わえる。動機に説得力がある(?)点も良い。但しコレをいわゆる一般向けにやってもなかなか成立しがたいわけで、ライトノベルと言う枠組みを積極的に有効利用した佳作と評価しても言い過ぎではないかも知れないような気がしたりしなかったり。 |
No.939 | 6点 | 間違いの悲劇- エラリイ・クイーン | 2021/03/30 12:26 |
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「動機」は凄く良い。こういうノン・シリーズ作品をもっと書いていれば、探偵エラリーの苦悩でブルーにこんがらがった後期にも、そこから自由な佳作をもう少し遺せたのではないだろうか。
未発表のシノプシス。読みたがる人はいるし、商品性があるのは判る。しかし明確に未完成なものを刊行して“このネタはEQが唾付けてました”と主張しちゃうのはどうなんだろう。 |
No.938 | 5点 | 魔術師を探せ!- ランドル・ギャレット | 2021/03/30 12:25 |
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宗教を始めとして、馴染みのない考え方に触れるのは楽しい。けれど本書の“魔術”はキリスト教のパロディのようで、もともと素養があまり無いネタの更に捻ったヴァージョンには流石に歯が立たない。
と言うことだろうか、もっと楽しめそうな設定なんだけど今一つ相性が良くなかった感じ。かしこまった会話文は結構好き。 |
No.937 | 8点 | 大誘拐- 天藤真 | 2021/03/25 12:55 |
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面白い、だからこそ、読むほどに心臓がキリキリ痛くなる。これにどうオチを付ける?
と心配していたら、思いがけない算盤で意表を突きつつ、人情派の着地点でグッジョブ。ところでベクトルは正反対だけど漫画『バクネヤング』(松永豊和)を思い出しちゃったなぁ。 |