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[ SF/ファンタジー ]
妻という名の魔女たち
サンリオSF文庫版 1978年発行
フリッツ・ライバー 出版月: 不明 平均: 6.00点 書評数: 1件

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東京創元社
2003年12月

No.1 6点 tider-tiger 2023/05/07 01:13
~ノーマン教授は大学内の権力争いの渦中にいた。ノーマンの妻はそんな夫を守るべく、呪術を用いていた。
「そんなことはやめようよ」と諭すノーマン。
「うんわかった」と渋々従う妻。
その日以来、夫妻には次々と災難が降りかかりはじめる。

1969年アメリカ。フリッツ・ライバーの出世作。『奥さまは魔女』のホラーバージョンとでもいうのか。大学教授の妻たちが夫の出世のために呪術合戦を繰り広げる。コメディにした方がはるかに書きやすいネタだが、コメディ要素はまったくない。
フリッツ・ライバーにはテーブルトークRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ』のネタ元の一つとされる『二剣士シリーズ』もあり、実は自分はそちらから入ったクチだったりする。

夫の出世を願う妻たちの思いが、念へと変わり、怨と化していく。結局のところ呪術は存在するのか。呪術を学問的に捉えているところは独自性がある。そうは言っても、ちょっと古びてしまった感はある。文庫(サンリオ版)あとがきによれば初出の雑誌掲載は1943年とのことで、さもありなん。
ややくどいところもあるが、ここぞというところで不気味な光景が立ち上がってくる独特の筆致がいい。恐怖を盛り上げる演出としての多角的な描写、小道具の使い方が巧みだと思う。物語のはじめのほうに出てくる猫の使い方など抜群によかった。
学内でのゴタゴタもなかなか愉しく読める。終盤の展開はしばしば見かける類のものだが、もしかすると本作から影響を受けた作品が意外と多いことの証左かもしれない。

驚きや怖さを過度に求めずに隠喩の散りばめられた普遍的な物語として、夫の知らない女たちの物語、妻のいうことを聞かなかったばかりに酷い目に遭う夫の物語のような感じで愉しむのも一つの読み方かもしれない。

ジャンルはホラーにしてもよかったのだが、ダークファンタジーとしてSF/ファンタジーに分類した。
経年劣化はあるも、6点はつけておきたい記憶に残る作品。


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フリッツ・ライバー
不明
妻という名の魔女たち
平均:6.00 / 書評数:1